零の旋律 | ナノ

V


「これは!?」

 篝火はいち早く反応して玄関へ向かう。

「斎、お前は此処にいろよ。動くんじゃないぞ」

 下手したら、元白き断罪である斎は怪我の状態を顧みず闘いの場へ赴く気がしたからだ。だから篝火は念を押すことを忘れない。その後ろに朔夜と郁が続く。

「郁! お前は雛罌粟に伝えにいってくれ」
「わかった」

 玄関を出て、郁は銃声がした方向とは逆方向に走る。
 一人置いていかれた斎はタイミングが悪い所できたものだと白き断罪を軽く恨んだ。

「あー暇なんだけど」

不謹慎なことを口にする。


+++

「さてと、一体何人釣れるかな」

 焔と律は一人の罪人を殺害したのち、その場を後にすることもなく悠然と立っていた。
 求めるのは別の罪人、それも後々の作戦に支障がきたさないようにある程度の実力を保持する罪人。
 第二の街の罪人は、戦力的に力になれないものは白き断罪に歯向かわないように最初から指示されているのだろう、先刻から白き断罪を目撃するたびに逃げていた。そう言った罪人を焔も律も追いかけることはしない。ただ、立ち止まって待っていればいい。 そうすればおのずと戦闘に自信がある罪人が現れてくるから――

「白き断罪?」

 そんな焔と律の前に現れたのは篝火と朔夜。医者の自宅裏だった為、すぐさま目的に辿り着く。
 若干の疑問をつけて、篝火は白き断罪かと問う。何故なら今まで出会った白き断罪とは何処か――何がと問われれば具体的には答えられない違和感を覚えたからだ。何処か“異質”

「何故疑問系、とはあえて突っ込まないが、俺たちは白き断罪だ」
「そうか」

 篝火は戦闘態勢に入る。白き断罪であることが確定した以上、この街で争いごとを起こしても問題はない。朔夜も篝火の邪魔にならないように数歩下がってからポケットに手を突っ込み何時ものスタイルをとる。最も、朔夜の場合それが戦闘態勢というより、ただ単に偉そうなポーズとも言えるのだが。
 焔も相手が戦う意思を見せたことで銃を構える。律は何もしない。その様子を見た朔夜は

「おい、何もしないのか? そっちのピンク帽子は」
「ぷっ、ピンク帽子だって、ねぇ?」

 焔は笑いながら律の方を向く。一方ピンク帽子と呼ばれた律は聊か微妙な顔をしていた。

「やめろ、焔」
「いや、これは素敵なあだ名だ。これからはピンク帽子と呼ばせてもらうよ」

 そういいながら、朔夜に向かって一発銃弾を、前触れなく放った。

「!?」

 朔夜が得意とするは術による遠距離からの攻撃、それもワンパターンともとれる戦法。朔夜は当然ながら運動能力はそこまで高くない。体力も腕力もない。接近戦は致命的と言っていいほど苦手だ。そんな朔夜が銃弾の音を聞いてから対処するには時間が足りないし、反応出来たとしてもそこまで。交わすことは出来ない。第一距離も短いし、動くのには狭い場所だ。


- 163 -


[*前] | [次#]

TOP


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -