U 「成程なってあっさりいってしまってもいいのか?」 今まで言わなかったことを、こうもあっさりと答えてしまっていいのかと疑問に思う。この場にいる誰もが。 「ん? そりゃ別に聞かれなかったから答えなかっただけだし。別に名字聞かれて困るわけじゃないし」 「そりゃあそうか」 「そうそう。別に玖城や日鵺とかの貴族とかなら身元わかったら困るだろうけど、別にそんなんじゃないし問題は皆無だよ」 「そうだな。ついでだからいいか?」 「何?」 「王家の跡継ぎ問題って解決したのか?」 「王家の跡継ぎ問題?」 篝火はこの中で最後にやってきた罪人である斎へ質問する。そこの疑問符をつけて口を挟むのは世間知らずの朔夜。 「朔って本当に世間知らずだよねぇ。王家には今現在、跡継ぎがいないんだよ」 「何故だ?」 「えっとねぇ、どれから説明していいか本当にわからなくなるよ」 斎はため息交じりに話す。本当にこの青年は“何も”知らないのだ。国での常識や日常を。どれ程長くこの牢獄にいるのか、それもそれらを知らないほどにと一瞬気になるが、今は朔夜から聞かれた質問に答える。 「もう結構前の事なんだけどね、王家の第一子がある日突然いなくなったんだよ。理由は色々言われているけど、それが騒がれたのが俺が三歳くらいだったから、当然詳細はしらないよ。泉なら詳しくは知っているだろうけど」 「……へぇ、そうなのか」 「うん。で第一王子以外、跡取りがいなかった為、未だに現王が王様をやっているんだけど、流石に高齢でね、そろそろ世代交代をした方がいいってお歳なんだよ。でも由緒正しい王家が下手によその血を入れるわけにはいかなくて、それで跡継ぎ問題が発生しているわけさ」 「……因みな朔」 斎の説明に、ハルミネのことを質問してから、黙っていた郁が口を開いた。それは何処か重々しい。 「だから王家は、これ以上事態が変わらないようなら、最後の手段として六家の中から……いや、今は四家か。王家の血縁を出そうという話も出ているんだ」 「へ? どういうことだ」 「王家の血が滅びるくらいなら、由緒正しい貴族を新たなる王家に招き入れようって話だ。問題も山積みだがな。制度の見直しとか、帰属感の確執とかな。だからそれはまだ実行されていないはずだ」 「なんだか、お前……泉みたいだな」 情報屋を一緒にやっている家族だからあたり前と言えばそうなのかもしれないが、郁が情報屋の仕事をしているか、と問われればそれは素直に肯定出来ないものがあった。 「そりゃあ……一応情報屋だし。というか、兄貴は私に情報のノウハウを教えてくれないんだよなぁ……」 郁がそう言った時、医者の自宅裏で銃声が響く。サイレンサーをつけていないそれは、音が家の中にいても聞こえてくる。 [*前] | [次#] TOP |