零の旋律 | ナノ

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「元政府役人の死体に興味はない」
「流石、経歴までご存じでしたか」
「それはお前もだろう?」

 邪悪すぎる――不敵な笑みを泉は戯遊に向ける。冷や汗が戯遊の背中を流れる。

「……全く」
「俺が知りたいのは、どうして殺されたか、ではなく誰が殺したかってことだ」
「確かに私も誰が殺したか、までは知らないけれど。白き断罪の誰かってことは明白なんじゃないの? 銃で殺されていたし」
「お前だって気がついているだろうが、今までの殺されていた相手とは“銃痕”が違うってことくらい」
「やれやれ」

 お手上げとばかりに戯遊は肩をすくめる。泉の持つ情報は正確すぎる情報。 

「まぁ最もどんな事情があるにしろ、私が気になるのは貴方自らが調べる必要性は皆無だと思うってことかしら」
「他人じゃない、俺が調べたいから調べるだけだ。お前が口を挟む必要はない」
「連れないのね」

 戯遊の首ギリギリを鞭が掠める。

「ひぁ」
「二度目はないってわかっているよな? 戯遊」
「はいはい、退散しますって」
「あぁ、そうだ」
「何?」

 去ろうとしていた戯遊を、何か思い出したように、泉が引きとめる。

「一つきいていいか?」
「物によるわね」
「お前らはここで一体何をするつもりだ?」

 戯遊の表情が一瞬固まる。しかし、それは一瞬のことで直に戻る。

「何のことかしらぁ?」
「答えるつもりはないか。まぁいい、大体のことは知っているし」
「わからない部分は何かしら?」
「心。情報屋が扱うのは情報。それ以外のことはわからない、ってことだ」
「それもそうね、私も貴方の心なんてわからないし、予想することはいくらでも出来ようともね、完璧な正答にいたることはないわね」
「そういうことだ」
「じゃ、もういいかしら? 私は退散するわ、これ以上長居したら私の可愛い可愛い命が儚く散りゆきそうなんで」

 戯遊はスキップをしながらその場から立ち去る。一人になった泉は独り言を呟く。

「とんだ、道化師だこと」

 煉瓦を基準に造られた第二の街。そこで起きた殺人事件。銃痕が今までの物と違う、その違和感から始まる。
 殺されたのは政府の元役人。役人になる前は武官で実力も高かった。その実力が認められ役人に転職した程だ。その相手を、銃痕一発以外何も痕跡なく殺したのだから。現状は血痕と銃痕以外に建物の損傷は見られなかった。いくら此処が路地裏で人通りが少ない場所で、犯行時刻が夜中だったとしても――武官が無抵抗のままやられるわけがない。争った形跡があっても不思議ではない。

「……死か契約か服従か隷属か、いや、全てか」

 誰も聞き取れないような声で泉は呟く、証拠のない現場。
 犯人の手掛かりをつかめる糸口があるとしたら、犠牲者の外傷。それだけ。
 毛髪一本すらない、綺麗な綺麗な現状。“綺麗過ぎる現状”それは泉にとって何度も見たことがある出来事だった。

「証拠を残さずに相手を殺すことで、政府……軍から犯罪者として捕まらないための策」

 証拠がなければ、政府は逮捕することが出来ない――基本的には


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