零の旋律 | ナノ

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「第二の街は罪人の牢獄では異色で、治安がいい街だからな。支配者である雛罌粟(ひなげし)は不要な争いを好まないから、無益な殺生を避けようと――罪人達を守ろうとしたって所だろう。だから、今俺たちの前から逃げた罪人どもは、戦闘的な面では大して役に立たない駒ってわけだよ」
「ふーん、変だな、罪人なんて、所詮犯罪者でしかなくて、犯罪者以外ではないのに」
「まぁ犯罪者という枠で一くくりにはできないってことじゃねぇのか。というか規則を破って罪人の牢獄を滅ぼそうとしている俺たちは既に犯罪者で、罪人達となんら変わらないと思うけど」
「そりゃあ、そうか」

 焔は目を瞑って笑う。広がる脳内の光景は、あの日、大切な人がいなくなったときの記憶。

「でも、まぁ俺にとってはどちらでもいいよ。俺は復讐が出来ればいいだけだし」

 復讐をするためだけに白き断罪に入った。
 復讐をするための手段を増やすためだけに、白き断罪を利用しようとした、唯それだけ。
 だから、別に犯罪者になろうと構わなかった。

「だろうね、焔はだから俺と行動をしているんだろ?」
「律は、怪しさ満点だけどな」
「お褒めの言葉頂き光栄です」
「うわー、棒読みでわざわざいうことかよ」

 白き断罪内で、白圭が隊長を務める第三部隊“白蓮”の異色が動く。

「(最愛の妻と子供が殺され復讐を誓う白、親友の真相を知りたい白、師匠とともにありたかった白、恋人を殺された白、大切な人に生きてもらうための白、認めてもらうための白、信じられなかった白。……そして、復讐の蒼)」

 ――消えろ消えろ消えろ、私の消えない傷

+++
 朝日は上がらない。時間を狂わす罪人の大地。

「早いな、篝火毎回」
「って……なんで起きているんだ?」

 明朝一番に起床し、着替えを済ました篝火の前に現れたのは一睡もしていない泉。本来なら睡眠時間であり、就寝中の泉が起きている事に疑問符が浮かぶ。

「ちょっとな、用事が出来たから出かけてくるだけだ」
「寝なくてもいいのか?」

 流石に三日連続の徹夜は厳しいだろうと、気遣っての言葉だったが、泉は特に問題がないようにいう。

「別に、用事を済ませたら寝るから問題はない。自分の為に動くんだ、睡眠時間くらいいくらでも削ってやる。まぁ流石に眠たいから機嫌が悪いがな」
「……自分で機嫌が悪いというのもどうかと思うが」

 もっともな言い分には泉は返答しないで、台所でグラスに水を入れて飲む。

「じゃあ、出かけてくる」
「はいはい、途中で睡魔に襲われて、ぶっ倒れないようにな」
「そんなヘマを誰がやらかすか」
「でしょうね」

 昨日の夜の出来事など全くなかったように、二人は会話をして、泉は仮の住まいを後にする。


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