第参話:狂気なる紅 +++ ――謳う謳う 「あーあ、血でまみれちゃったわぁ」 血飛沫を浴びた女性は笑う。 「それは、悪かったな」 「いいわよぉ、謝らなくてもぉーだってぇ、新鮮な真っ赤な血を浴びれたんだものぉ、きゃはっ」 何処か壊れたように笑う。 ゆったりとした足取りで女性は近づく。 「……最果ての街支配者――梓、何故ここにいる?」 女性――梓は、狂喜に満ちた笑みを浮かべながら、彼の人物の元に歩みよっていく。 「きゃははっ、それはわぁ血を求めて彷徨っていたからよぉ」 「……大層な理由で」 「あはははははっ、きゃははははっだってだってぇ、真っ赤に咲き誇る赤は、どんな華達より美しく、飛び散る細胞は、どんな景色より艶やかで、私の心を満たしてくれるんだものぉ」 クルクル踊る。眼の前に敵――白き断罪がいても関係ない。梓は踊る。 「……見られたからには死んでもらうか」 銃を構える。標的は梓。 「あはははははっ、きゃはははっ咲き誇って貴方の死に華を、一瞬の美を私に見せてぇって?」 「……大丈夫かな? こいつ」 白き断罪の一人――焔(えん)は、隣にいる同じ白き断罪の一人に話しかける。 「さぁ?」 首を傾げて、大して興味なさそうにその光景を眺めるのは律(りつ)。 「きゃはははっ」 地面から、唐突にそれは現れた。 「!?」 焔と律は地面を同時に蹴る。焔と律のいた場所に、蔓が襲いかかってきた。先端は鋭利で、当たればただでは済まない。その威力を証明するかのように背後にあった建物が蔓に貫かれ砕けた。 「こわっ」 梓に向かって焔は発砲する。目指すは頭部。しかし、梓を守る意思があるように新たに地面から現れた蔓によって妨害される。 「きゃはっ。無駄よぉ、この子たちは、私を守ってくれる騎士なのだからぁ」 「焔、一旦退くか」 「退くのか?」 焔は、隣にいる“仲間”の言葉に僅かに首を傾げる。蔓の威力は確かに強大だが、二人で倒せない相手ではないと判断したからだ、。ましてや、今の攻撃スタイルを見る限り遠距離タイプの女性。いざとなれば接近戦に持ち込めばいいだけの話。 [*前] | [次#] TOP |