V 「因みに誰が焔ってやつを討伐にし?」 「愚問だの。蘭凛(らんりん)が動いている、時間の問題だろうの」 「あー蘭舞(らんまい)と凛舞(りんまい)の双子か、なら安心だ」 朔夜は納得し頷く。今さらながら、普段雛罌粟の後ろに控えているはずの腹心の部下である双子がいないことに気がつく。 「ってか、雛罌粟と蘭凛がいるからこの街は年齢詐欺の巣窟って呼ばれているの知っているか?」 「我は別に年齢を意図して詐欺しているわけではないし、蘭凛は特殊だから仕方ないのはお主らとて知っているだろうに、何を今さら」 「雛罌粟は充分詐欺だ。おばあちゃんだ……」 「そこに居直れ!」 朔夜の禁句に対し雛罌粟が即効反応する。 「うおっつい口が本音を……、というわけで俺は街をふらつきながら逃げる」 何故か公言しながら朔夜は逃走した。雛罌粟はもとより追いかけるつもりもなくため息一つでその場は収まる。少女の姿をとっていながら、実年齢を考えると体力が余りあるとはいえず、不要な体力をこの場で使い果たすわけにはいかない、という理由も僅かながら追いかけなかった理由に含まれるだろう。 「何があやつはやりたいのだ」 「さぁ?」 「……篝火、お主は少しあの若造を甘やかしすぎだ、過保護過ぎるぞ」 「だから、俺は保護者じゃないっての」 「お主は充分保護者だ」 篝火にとっては保護者気分のつもりはないし、年齢自体たいして変わりない。だからこそ毎回否定するのだが、誰一人として篝火の否定を認めない。 「保護者じゃないって否定するだけの根拠がないよなお前は。毎朝朔夜の髪の毛梳かしているし」 保護者説を有力にすべく、郁が雛罌粟側に加わる。 「あれはあいつが髪を梳かさないから見ていると梳かしたくてたまらなくなるだけだ。折角綺麗な髪質をしているのに勿体ないだろう」 「綺麗好きだよな、お前は」 「朔夜がだらしないだけだ」 「毎朝起きたら布団を畳むし、ご飯食べたらすぐに片づけをするし、本当に感心するぞ」 「そりゃあどうも。で、だから俺は保護者説が有力になっていくのか?」 「当たり前だろ」 「って時間を無駄に浪費したな。雛罌粟悪いが医者の所まで案内してくれないか、斎が結構重傷なんだ」 「俺って今の今まで忘れられていたけーですか? まぁいいけど」 未だお姫様だっこな状態から解放されない斎は、そういえば篝火はどれだけ体力や辛抱強さがあるのだろうと考える。 「(そんなに軽くないのになぁ、俺)」 [*前] | [次#] TOP |