零の旋律 | ナノ

U


「流石恐怖政治の雛罌粟様。誰も独裁者には叶いませんか」
「……お主は我を何だと思っておる。まぁこの街で治安を乱すのならばそれ相応の代償を払ってもらうからの、覚えておくといい」
「そんな物騒なことはやらかしませんよー」

 声質を上げながら棒読みで返事をする斎。

「そうか。先刻榴華の家に爆弾を仕掛けてやるという物騒な言葉を耳にした気がしたが、我の危機間違えか」
「……」
「夢夢忘れるではないぞ、第二の街で治安を乱すことを我は許さぬと。我の敵に回っても構わないという度胸があるのならば、まぁこれ以上忠告はせぬがな」
「はーい」

 斎だけが返事をし、他の者は首を縦に振る。もとよりこの街で雛罌粟に逆らうつもりは毛頭ない。

「余り宜しくない事態が起きている事をお主らには伝えておこう。この街には現在最低二名の白き断罪者が侵入して狙撃による暗殺を行っている。狙撃にはくれぐれも気をつけることだ、常に警戒しておればお主たちなら狙撃などされぬとは思うがな」
「狙撃だけなのか? 他にも色々な手法で暗殺していても不思議ではないが」

 情報屋である泉以外の者は篝火の言葉に尤もだと頷く。何も狙撃に拘る必要はない。

「我が確認している白き断罪者は現状二名。そして我の街で殺された罪人は皆銃撃によりやられた。他にもやっていない可能性がないわけではないが、この街で殺人事件など滅多におきぬからな、狙撃にしろ狙撃以外にしろな」
「成程」

 雛罌粟のその言葉は充分説得力があった。是が殺人が日常的に起こる最果ての街ならまだしも、此処は第二の街。治安が最もいい牢獄。

「狙撃を行っている者は焔というそうじゃ。そして焔に付き添うように一名おる。情報屋からの情報じゃ」

 情報屋とは泉を指していた。各街にも情報を商売として生計を立てている者も存在するがその中で泉の能力は群を抜いている。

「故に現在この街では銃の所持を禁止しておる。銃を所持して、なお且つ白い衣を着ている者が入ればそ奴が焔と見てもよいだろう。お主らの中で銃を所持している者がいれば我に渡せ、我が預かる」

 雛罌粟が手を出す。斎は一瞬迷った後郁に目配せをする。斎は普段きている服の中に短剣と拳銃を札が使えない時の為に仕込んでいたが、今回ばかりは朔夜の服を借りているし、数日は動けないだろうと武器の類は郁に預かって貰っていた。郁は斎の拳銃を取り出し雛罌粟の掌にのせる。他の者は拳銃を所持していない。篝火はそもそも武器を所持していないし、朔夜は武器の扱いが出来ない。
 泉は黒い十センチ程度の棒を所持していて、形状を鞭などに変形をし武器として扱うが、基本は真っ直ぐな物にしか出来ない為拳銃にすることは出来ない。それを抜きにしても泉が拳銃を扱っている姿を篝火たちは目撃したことがない。扱えないのか、扱わないのか、それとも扱いたくないのか。郁の場合は二刀の刀を使うし、拳銃を扱うのが致命的に苦手だった。一度斎の拳銃を借りて練習したことがあったが、斎に別の才能があるよと言わしめるほどの腕前だった。
 最も、郁に料理をマスターさせるくらいなら銃の扱い方を完璧にさせると断言していたが。


- 145 -


[*前] | [次#]

TOP


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -