零の旋律 | ナノ

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「で、俺の質問した応えはなんだ」

 いくら情報屋であり、異常といっても差し支えない程の情報力を所持していても、人の心までは、真意まではわからない。だから泉はこの場にやってきた。

「さっきも答えたはずだけど、それだけだと物足りないのかい?」
「物足りていたら俺はこの場から去っている」
「全く。けれど俺の真意を泉君に教える義理もつもりもないよ。俺にとって君は要注意人物であるのだから」

 そう、幾重にも張り巡らせた作戦を壊されては困る。

「そうか。でお前の要件はなんだ?」

 お互いに要件があったからこそ、この場に現れた。

「“あれ”に余計な知識を与えないでほしいな」
「それはお前の大切な駒の一つだからか? あれを失うと痛手でもくらうか?」

 お互いにお互いが腹の探り合いが続く。
 決して確信的言葉は口にしない。万が一、相手がその情報を知らなければ、余計な情報を相手に与えてしまうからだ。

「そうだね、否定はしないよ。まぁ、どちらにしろ泉君とはどうせわかりあえないか、俺は」
「無理だな」
「なら、そうそうに撤退しますか」
「消えろ」

 お互いがお互い、本来の目的を達成させることなく銀髪は泉に背を向け歩き始める。
 目的地は、最果ての街。

「誰も彼もが何かしらを隠した歪な関係で成り立っている。全ては上で失ったものが多すぎるから。くだらねぇ……ってそれは俺も同じか」

 大切な人を守るために振るう刃に後悔はない。
 けれど、それでさらに大切な人を失うことだけはしたくない。
 人は得るだけの片方は出来なくて、失うだけは出来てしまうのだろうか。
 気づいた後では全てが遅くて、物語が終焉を迎えていた、そんなことがなければいいのに。


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