零の旋律 | ナノ

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「さて、俺は君の質問に答えようか。白き断罪を野放しにしていたのは単純明快だよ。別に俺の計画には何ら支障がないからだ」
「支障はないけれど、支配者たちには抹殺しろと通達したのか、相変わらずだ」
「……何度も繰り返し思うけれど、泉君、情報入手しすぎ。全く、君と通じている人物でもいるのかい? 君が他人を介して情報を得るとは到底思えないけれど」

 到底思えなくても、泉の情報網の凄さに、誰か通じている人物がいても不思議ではないと勘ぐってしまう。あの時支配者たちを集めて密会した時の場所は結界に長ける雛罌粟の元。他の罪人に漏れないように雛罌粟に幾重にも結界を張らせた。何人たりとも、その空間には侵入出来ないように。
 しかしあの中でした会話も泉には全て筒抜けだ。
 可能性が零に限りなく近かったとしても、本当に密告している仲間が支配者たちに存在していたとしても、泉が自らそれを口にしたということは、情報源としてもう必要がないからか、絶対に露見することはないという自信があるかの二択。

「支配者たちを全員調べ上げてみたらどうだ? 銀色が自ら厳選した役者たちを疑いの眼差しで見つめて」
「……そんなことをしたらせっかく集めた役者の意味がなくなる」
「だろうな」
「意地悪だね、俺がそうしないと知っているからこそ、君は俺にそのことを教えた」

 泉の情報源は、自分の力では暴いていても、どうすることも出来ないものだろうねと銀髪は心の中で呟く。
 話したところで、意味はない。
 泉の扱う情報の術を銀髪は嘗て黒と例えた。それも真っ黒。
 他の色が一切入り込めない隔絶させた黒だと。だからこそ、銀色が侵入する隙間がない。
 泉はそれを否定しなかった。ただ笑っただけ。 


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