零の旋律 | ナノ

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 ――大切な存在がいなくなると、心に穴があくんだよ

「金の瞳って殆どみたことがないでしょ?」

 斎は静かに語り始める。金の瞳を篝火たちは殆ど見たことがなかった。今まで出会ったことがない、そういって過言ではないほどに。

「烙は金の瞳をした化け物って嫌われていたんだ。珍しいから、見かけないから。他人とは違うから、その程度の理由でね。親からも虐げられていた。否定され続けたからこそ、烙は自分の瞳が嫌いで仕方なかった、烙の回りには誰も助けはない。誹謗中傷のまとだったんだ……まぁその辺は烙から聞いた話なんだけどね。だけど、俺はその瞳を綺麗だなって思ったんだ」

 例え自分の瞳を嫌っていようと、その視線は何処までも澄んでいて。


 ――何で、そんなに前髪で眼を隠しているの? 綺麗で勿体ないよ?
『綺麗ってふざけているの? そんなはずはないよ。皆皆僕の瞳は気味が悪いって嫌っている』
 ――誰もかれもが?
『そう、誰も彼も皆。僕に出会った人全て』
 ――じゃあ、俺が君の瞳を綺麗だっていった初めての人だね
『そんなこと……言われたことないのに』
 ――泣くなよ、俺は斎、君は?
『僕は……絡』

 出会いはそこから始まった。


「俺たちはそれから仲良くなって。俺と烙は白き断罪の一員として日々を過ごしながら同時に中央学校に通った。烙は昔とは違い明るくなったし、友達も出来た。けれど、全てが全てそうなるわけではない。当然烙のことを嫌うものも憎むものもいた。俺はそれとなく、烙にちょっかい出せないように適当に痛めつけたりは日常的にしていたんだけど、勿論烙にはばれないように」

 影愚痴をたたく者
 悪口を云うもの
 何も知らないくせに、外見だけで人を判断して身に覚えのない誹謗中傷を平気でして嘲笑うもの
 全て、絡の心を傷つける者は、絡に気がつかれないように対抗した。

「だけど、あの時は耐えられなかった。生かしてはおけなかった。同じ白き断罪に所属していながら、あいつらは、絡を貶めようとした」

 だから殺した

「貶め入れようとってどんなことをしようとしたんだ」

 朔夜は問う
 斎は答える

「絡を罪人に仕立て上げようとした。二度と這い上がってこられないように奈落の底に突き落とそうとしたんだ」
「!?」
「その話を偶々聞いてしまった後、気がついたら俺はあいつらを殺していたよ。あいつらは俺の大切な親友を傷つけようとした、それだけは許せない赦さない。大切な人を傷つけるような真似はさせない。だから俺はあいつらを殺したことを後悔していない。そしてそれを言い訳として理由を語るつもりもない」

 今まで誰にも話さずに心の中に留めておいた。
 大切な存在を傷つけられようとした時反射的に彼らを殺してしまった。けれど後悔はしなかった。
 大切な存在を傷つけようとする者は全て敵だから。
 理由を語れば大切な存在を今以上に傷つけてしまうから、これ以上自分のことで傷ついて欲しくなくて、心が壊れて欲しくなくて。
 何も言わずに黙って罪を受け入れた。何も言わずに、弁解も弁明もせず。
 それが、誰にも今まで語らなかった『理由』


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