Z 斎の身体は次から次へと包帯が巻かれていく。泉の手伝いを篝火はして、その様子を郁と朔夜は眺める。 「馬鹿だろ、なんで一人で武器も持たないででていきやがったんだ!」 斎の寝ていた布団の周りには、普段常備している武器が置いてあった。 それはつまり白き断罪の絡と出会ったときは手ぶらだったということだ。 「だって……俺には」 「なんだよ」 斎はとぎれとぎれに応える。 「俺には絡を傷つけることなんて出来ない」 そう、だから武器を持たなかった。 大切な親友を傷つけることはしたくなった。 外傷はつけていなくとも心の傷を親友に自分が負わせていることを理解した上で、それでもこれ以上傷というものを負ってほしくはなかった。 だから武器を持っていかなかった。 だから本気で戦おうとしなかった。 「馬鹿じゃねぇのか! それでてめぇが死んだら元も子もねぇじゃねぇかよ!」 斎がこの状況ではなければ朔夜は間違えなく斎の頬を殴っていただろう。 「それでも、これ以上傷ついてほしくなかった」 「馬鹿だろ、てめぇは……あいつは殺す相手だ敵だ、じゃなければ俺たちが殺される。お前も。それなのにそれでもてめぇはあの男を庇うのか、傷つけることを拒否するのか」 朔夜の言葉が斎の胸に刺さる。 朔夜も斎にとっては大切な仲間。 「絡は……俺の大切な親友だから」 「なら、なんで親友を裏切るような真似をしたんだよ」 「それは……応えるつもりはないよ」 斎は口を閉ざす。いうつもりはない。 白圭にも言わなかった。 殺した理由を。 理由をいうことで誰かが傷つくのなら 理由は自分の心の中にしまっておく その方が、相手を傷つけない為だと思ったから―― 「そうかよ、わかったてめぇがその気なら」 「朔、何をするつもりだ?」 朔夜が何をしでかすつもりなのか検討がつかず、郁は怪訝そうな顔をして朔夜を見る。 朔夜は郁の視線を気にしないで自室へ足を運ぶ。 その時丁度。 「終わりだ」 斎の手当が終わった。泉は再び椅子へ腰掛ける。 篝火はほっと一息をついた。 [*前] | [次#] TOP |