Y 「斎、教えてくれ、お前は何故あいつらを殺した。罪を犯した」 「答えないよ。それだけは答えない。何度もいうようだけれど俺はあいつらを殺したことに後悔をしていないよ、それが俺が言える応え」 「そんな応えでは納得など出来ない」 「それでも、俺は俺があいつらを殺した理由はいえない」 斎の断言に絡はこの場から引きさがることを決意した。 別に理由を知ることを諦めたわけでは断じてなかった。 唯、これ以上この場にいて、三人と戦闘を続けていたら斎の手当を出来なくなり斎が死んでしまうから。 裏切られた悲しみの感情に任せて斎を傷つけたのは紛れもなく自分。 それは弁解する余地もない程に明解だった。 それでも、冷静さを取り戻した絡の心の中に芽生えている想いは斎には死んでほしくないことだった。 篝火たちは去りゆく絡を追うことはしなかった。真っ先に駆けつけるのは怪我をした“仲間”の元。 「馬鹿か、お前は一人で白き断罪を勝手に相手にしているなんて!」 一発篝火に殴られそうだなぁと斎は考えながらも意識が遠のいていく自分がいた。血が足りなかった。 「ちっ、出血が多い」 朔夜は自分の上着を脱ぐ。太陽にさらされていない白い肌が現れる。 朔夜は急いで上着で出来る限りの止血をする。 一番酷いのは、袈裟斬りにされた場所だろう。 「篝火!」 「わかっている」 篝火は斎の身体を下手に動かさないように慎重になおかつ急いで部屋に運ぶために斎を持ち上げる。 両手で斎の身体を支える 部屋に入った朔夜がまずしたのは、自室から多量の包帯とガーゼ、消毒液の入った救急箱を用意する。 斎をソファーの上に篝火は寝かせる。ソファーへ地面に血がつくのなんてお構いなし。 そんなもの、後でどうにでもなる。けれど命はどうにでもならない。 一度失ってしまえば、二度と元には戻らない。 「朔夜、投げろ!」 篝火の言葉に自室から出てきたばかりの朔夜は篝火に向かって軽くはない救急箱を投げる。それを篝火は見ないで受け取る。 「泉、手伝え」 現在時刻は深夜で確実に起きている泉を呼ぶ。 この中で包帯などの怪我の処置が一番うまいのは斎だったが、それと同様に泉も上手だった。 泉は無言のまま斎の傷口を見ながら処置をしていく。 そうはいっても此処にあるのは限られた道具だけ、応急処置程度しかできない。 けれど、適切な処置をすれば斎は死なずに済むだろう。 誰も、何故斎が一人出ていくのを止めなかったと泉を責めることはしなかった。 [*前] | [次#] TOP |