X 「何をしている!」 「!?」 殺気が絡の身体を貫く。 とっさに絡は斎の左足首に刺さっていた刀を抜く。 「ぐっ……」 斎は痛みに顔をしかめる。 刀と刀が交差する。独特の金属音を奏でる。 絡は後方に跳躍して下がる。 斎を庇うように、黒い人物は立つ。 「かお……る」 「馬鹿か斎、何をやっているんだ」 真白の絡の刀とは対極の色の真っ黒な刀を一刀構えながら斎の状態を郁は見る。 自分よりもずっと重症だ。手当がすぐに必要だろう。 「あはは、言葉も出ないや」 「下がっていろ」 斎の軽い笑いに返事をしたのは郁ではなかった。郁は目の前にいる絡を見据えている。 郁の後ろからやってきたのは、篝火と朔夜だった。 起きたてのなのだろう、三人は寝巻のままの姿現れた。 郁の髪は後ろでみつあみに縛ってあり、昼間と同様に真っ黒なパジャマを着ている。上には軽い上着。 篝火は普段ならいつもしているバンダナをしていなく、若干斎よりも長い髪金髪。薄茶色の半そでに黒いズボンをはいていた。朔夜の髪の毛は一部からまっているのかボサボサしていて、起きたてですと主張していた。 三人とも、今日の疲れで熟睡していた。しかし、外から聞こえるききなれた声と音に目を覚まし、何事かと武器を携え外にやってきたのだ。 「てめぇ、不意打ちか? あぁ?」 いつもよりご機嫌度が悪い朔夜は斎の身体を見た後すぐに視線を絡に移し替える。 「ご丁寧に白き断罪の印を外してまで」 朔夜は絡に向い容赦も遠慮もなく雷の術を放つ。 「くっ……」 絡はそれをギリギリのところで回避する。 地面のコンクリートが雷の術の衝撃で砕ける。当たればただでは済まないなと絡は認識する。 そして、榴華の傷が癒えていない現状で三人と相手にすれば勝算がどちらにあるかは目に見えているようなものだった。 絡は物の数秒で退避することを決める。 最後に斎の顔を見ようと顔を合わせると 斎は痛みに顔を顰めながらも、絡に微笑みかけた。 優しい優しい微笑みを この微笑みに、この笑みに、この眼差しに ――俺は何度救われたのだろう [*前] | [次#] TOP |