零の旋律 | ナノ

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 第一の街で篝火が仕事をしない朔夜達に静かなる怒りを向けた後からは、朔夜達も多少は働いていた。そんなときのことだった。

「はぁ!? 第二の街に移動だ!?」

 声を荒げたのは朔夜。街の修復をしながら、忘れていたと唐突に言いだした。それは第一の街の罪人は暫くの間第二の街へ移動するということ。
 当然ながら、いきなりすぎて朔夜は顔を顰める。
 そのうち皺が取れなくなるぞ、と篝火たちだけではなく榴華まで思い始める。

「ヒナちゃんところなら結界があるから、この街よりはまぁまだ安全やしな。それに今は住める場所少ないやん」

 大半の建物が由蘭の術の手により崩壊した今、いくら年中明るさが変わらないとしても、灰色の空からくる何もない明かり。手元を見やすいようにするための街頭の大半は壊れているため、現状は決して明るくなかった。
 そして、榴華は問題発言をする。

「というか、此処の水源が壊れちゃったんで、暫くすると水が出なくなりますー」
「ふざけんな!」
「ふざけとらんよ。水がないと人は生きていけんのやから。まぁまだ暫くは使えるやろうけれど、全員分を補うのはまず無理なんよ。だから第二の街に移動するねん。他の罪人は続々と移動始めたんよ。サクリンたちも明日までには移動してーな、では」
「二度と戻ってくるんじゃねぇ」

 ぼそりとは呟かず榴華に聞こえるように朔夜は口にしたが、それに対しての返答はなく、榴華は唯、朔夜達に後ろ姿を見せて手を振るだけだった。

「で、いつ出発するんだ?」
「明日」

 篝火の質問に朔夜は即答する。
 明日までにということは別に今直ぐには水に困らないということだ。それに先ほど自宅に戻った時はまだ水は使えた。
 ならば、別に急いで第二の街まで移動することはない。

「今日は出発しないんだ」
「あたり前だ、お前だって郁だって怪我をしているんだ。そんな直に出発して傷口に響くようなマネになったら困るじゃねぇかよ。一日でも休んだら違うだろうが、っててめぇは大丈夫か」

 ほぼ無傷な斎の心配はすることなかったかと、朔夜は斎を見る。

「まぁ、頑張って作業してるしな。でもまぁ、郁を休ませておくのも大事だな」
「さりげなく優しげがあるよねー」

 篝火と斎は感心したように頷く。
 口は悪いのにと心の中で付け加えながら。流石に鑓水を入れるようなマネはしなかった。

「じゃあ、やれるとこまでやって今日は篝火の家で休もうか」
「俺んちだ、朔夜ん家だ」
「あぁ、ごめん。わざとじゃなくて素で間違えた」
「わざと間違えられるより腹立つ言い方だな」
「うん」

 そんなやりとりを聞いていると、篝火は安心する。
 傍らに誰かがいるのはこんなにも心地よい。

 ――此処は一人ではない
 そう考えてしまう。
 そう思ってしまう。

 此処は罪人の牢獄なのにと


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