[ 「なんだい? 夢華」 「……どうして、律は頑なに人と接することを避けるの?」 「……君は相変わらずの不思議ちゃんだね」 「別に、僕は感じるだけ。だから、あの黒い人と君は同じ瞳をしている」 黒い人、それは夢華が今日出会った泉のこと。 「……本当に鋭いよね。夢華は」 一瞬悲愴な顔をする律に、夢華は何も言わない。 「僕は唯、感じるだけ」 そう呟く。 同じ言葉を。 ――お前は存在していようと存在していなくとも何も変わりはしない 唯、ほんの少し不便になるだけだ ――僕は夢の華 現実にいてもいなくても変わりはしない。 存在意義なんて何もない。 ――僕は夢と現実の狭間に存在して、僕がいなくなっても、誰も何も変わらない ――だから、僕を見つけないでね 「君は黒い人と同じ瞳をしている」 繰り返す言葉 律の脳裏に過るのはあの時の記憶 壊されたあの日は戻らない だから―― 「殺す?」 律の心情を読み取ったかのように夢華は口走る。 「夢華ちゃん……は本当にそういうのでは君に右に出る者はいないんじゃないかな」 律は夢華の髪の毛をくしゃくしゃとしながら苦笑する。 真白な少年は、儚すぎる。 そして、正確に相手の心情を心を現状をついてくるのだ。 「律の……その瞳は、ここには映らない」 「そうだね、じゃあ夢華ちゃん、俺はやることがあるから」 そう言って律はその場を後にする。絡が床に拳を思いっきり叩きつける。 痛みで怒りを忘れないと、平常心を保てなくなりそうな程に。 「絡……」 夢華の瞳に映るのは ――あぁ、そうか 相容れないのは、守りたいべきものと守られたものだからだ 夢華は理解する。 烙が律を嫌っていること理由を それは恐らく烙自身が気づいていないこと [*前] | [次#] TOP |