零の旋律 | ナノ

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「ってかさぁ、なんで泉は昼間なのに活動しているの?」

 斎は本来なら睡眠中で起きない泉が、途中由蘭の放った爆弾の関係上で目覚めたといっても、白き断罪が撤退した今、再び寝ていても不思議ではないのに、泉は起床している。さらには建物の修復のための手伝いもしている。大半は篝火しか働いてないのが現状だったが。
 それが斎には不思議でならなかった。

「一度起きたら明日の朝までは起きているよ」

 二度寝は好まないんだ、そう告げる。


 邪魔な瓦礫を篝火は一人せっせと片付けていく。
 内心では貴様らも手伝えよと呟きながら。
 ふと、思い出したように篝火が手を休めて泉の方を向く。

「郁は?」

 この場にいない郁は今何をやっているのだろうかと。
 手を怪我しているみたいだったから、どこかで休んでいるのかそれとも別の場所で作業をしているのか。
 朔夜と同様に郁は力仕事には向かない。別の処で力が関係ない仕事の手伝いをしていたとしても、不思議ではなかった。

「あぁ怪我の手当した後は、暫く休ませている」
「そっか。お大事に」

 篝火はすぐに作業に戻る。
 
「あぁ、そうだ」

 思い出したように泉は口を開く。

「次いでだから教えておいてやるよ。高位の政管が基本的には国の政策を担っているが、王族と貴族もそれに関わっている。その程度は知っておけよ。世間知らずの朔夜。知っておいても損はないぞ――特にお前は」

 意味ありげに泉は朔夜に話しかける。朔夜の瞳が大きく開かれ――驚愕を現していた。
 朔夜の手から一応持っていた箒が落ちる。地面にカランと鈍い音を立てる。

「泉……おまっ」
「言ったろ? 俺は情報屋だって、闇を纏いし裏に生きる黒さ」
「……ちっ」

 朔夜は地面に落とした箒を拾う。
 それ以上は泉の言葉に触れないように、掃除を開始した。
 疑問に思うのは、篝火と斎。
 朔夜が何をそんなに驚くのか、それが不思議で仕方なかった。


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