第五話:銀の序章 +++ 最期の大地に流れる神聖なる水音に二つの影が耳を澄ませる。 「どうやら、終わったようだよ」 時刻は白き断罪が第一の街を後にした頃合い。 「終わった? 終わってなんかいないだろう?」 「そうだな」 「終わりは、滅びゆくときが終わりさ、今は一つの出来事にひと段落がついただけ、それは決して終わりなんかじゃない、終わりは私たちが創るのさ」 歪んだ微笑みで、空を見上げるように、見る。 しかし、そこは天井という空間が広がっているだけ。 それでも、その先にあるものを想像する。 「まだ、長い長い序章のうちの一つだよ」 二つの影にとって 全ては描かれた物語の序章 +++ 彼女は笑う。 彼女は歌う。 「生きていく気力がないから? あはははははっ、あははははっだったら死ねばいいじゃない」 眼の前の罪人を、彼女は見下し嘲る。 「こんな廃れた大地でどんな希望を見出せというのだ」 罪人は忌々しそうに答える。 「希望? そんなもの必要なの、あははっ、くっだらない、希望がなければ生きていけないの?」 「人はみな、そうだろう? 希望にすがっているんだ」 「あはははははっ、じゃあ、貴方は今希望がないっていったんでしょ、生きていけないんでしょ、ならとっとと死になさいよぉ。生きていく気がないとかいっているんなら、とっとと自害でもなんでもして死にゃあいいじゃないのよぉ、それすらも出来ないだなんて、そんなのは唯の意気地なしよぉ」 「……」 罪人は黙る。 彼女は喋る。 「くっだらないわねぇ、希望? 夢? 将来? それが一体何の役になるってのよ、そんなの唯の自己暗示じゃない、自分を自分として成立させて、他者と区別するための唯の自己暗示、自己満足という名の魔法よぉ。希望を失ったから生きていけないの? ならば死になさいよぉ、意気地なし、それかあれねぇ?」 彼女の瞳に狂喜が宿る。 「唯、死にたいと口にするけれど、本心では生きたいと願っていて、いざ死を目の前にすると、何もできなくなるのよねぇ。臆病風に吹かれて身体が震えてあははははっ、おっかしいわよねぇ。きゃははっだって死にたいって死のうとしているのに、震えるなんてきゃははははは、最後の最期で生きたいって叫ぶのよ、あはははは」 彼女は回る。 クルクルと 踊る [*前] | [次#] TOP |