Z 「僕は君の顔が見たいからだよ」 夢華の言葉に、会話をどうしたらいいのか泉は悩むがすぐにそんなこと必要ないと槍を鞭へと変える。 敵であるならば、斬り捨てるだけ。 自分にギリギリで当たらないように匠に操り夢華へ攻撃をする。 郁を苦しめる危険分子などいらない 郁を傷つける存在など必要ない 「……」 夢華はそれを冷静に、確実に避ける。 地面を蹴り、宙を一回転して地面に着地する。 ふわりと。軽やかに。 「いきなり酷い」 「避けたやつが何をいう」 泉は笑う。 その歪んだ笑みを。 「……泉、寝ているところを起こされたのに、なんでキレてない」 否、正確には怒っているしキレてもいるのだろう。 しかし、何かが違う。何かが。 それを篝火も斎も感じ取る。朔夜は由蘭と戦っている為、そんなことを感じる暇が今はない。 普段ならキレている時の泉は、敵味方の区別なく、手当たりしだいのものを破壊していく。 それが普通だった。そう今までは―― しかし、今回は最初に登場した時以外は、敵と味方の区別をした上で相手を殺そうとしている。 理由は何か、篝火と斎にとって簡単にその答えがでる。 それは、郁が怪我をしているからだ。 それも手首の怪我が理由のように篝火と斎には思えて仕方なかった。 郁が怪我をしているのが、血が滴っているのが見えたから泉は、手当たりしだいにキレるのを止めたのだ。 しかも、完璧にキレているわけではない。 郁のことを大切にしている泉だからこそ、郁が怪我をしたから泉は戦っている。 寝ていることを起こされた理由ではなくて、だからこそ――。 [*前] | [次#] TOP |