W 絡は風に運ばれた場所で休息をとる。 直に、第一の街に戻るつもりではあったが、榴華との戦闘で予想外に怪我をしてしまった。 血も流している。 血が足りないと笑う。 舐めてかかったわけでは決してなかったが、榴華の強さは意外だった。 流石は第一の街を支配している支配者かと。 そして、自分の実力に自嘲する。自己嫌悪する。 まったくもって弱いと。 「本当に……自分が嫌になるな」 手で瞳を覆う。 それは涙が出るのを防ぐためではない。自分の瞳を見ないため。 これ以上自己嫌悪したくなかったからだ。 絡がいる場所は、第一の街から少し南に離れた砂地の上。 砂は毒を含んでいるため、長いは出来ない。 取るべき選択は二つ。 第一の街に再び向かうか、由蘭が作った結界のある白き断罪の拠点に引き返すか。絡が選んだ選択は第一の街に再び戻ること。 勝てない、もしくは勝てたとしてもただでは済まないから榴華から逃げた。再び第一の街に戻るのは白き断罪として、白圭の部下としてなすべきことをまだなしていないから。 榴華を殺すことはできなくとも、他に出来ることはいくらでもまだある。 身体はまだ動く。血は足りないが、致命傷ではない。 自分の白き衣の別になくても困らないような部分を、刀で切り裂き即席の包帯を作り、傷に巻く。 応急処置はこれで大丈夫――と自分を納得させ、戻らずに進む。 一方、絡に逃げられた榴華は、街の様子を眺める。 「あちゃあ、まだ街壊れとんよ……さて、どうするんが一番よいかなぁ」 頭をかく。榴華にとって優先すべきは、街ではなく罪人でもなく大切な幼馴染である柚霧。 しかし、第二の街に一時的に避難している以上、雛罌粟(ひなげし)が守ってくれるだろう。 第一の街より、第三の街より滅ぼすのが難しいであろう難攻不落ともとれる街。 それが第二の街。 第一の街支配者榴華が、攻撃的能力に突出しているのならば、第二の街支配者雛罌粟が得意としているのは、結界などの防御的能力。 街の中にはいれば安全だろう。 雛罌粟が守ってくれる。それならば心配はいらいないはず。 そうとは思いつつも一抹の不安は残る。 しかし榴華はその不安を無理やり取り除き、第一の街へ榴華は再び足を戻す。 もう二度と自分のことで相手を悲しませたくない その思いこそ榴華が柚霧のもとではなく、街に戻る理由 [*前] | [次#] TOP |