零の旋律 | ナノ

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 その様子を篝火と戦いながら所々見ていた想思は思わず叫ぶ

「白圭!」

 宙を飛ぶことをやめ、地面で髪の毛を鋭い刃へと変え、篝火と対戦していた想思は白圭の容姿に慌てる。
 今ここで白圭を失えば、白き断罪を失えば、また、自分は意味を失う。

 それだけは避けなければならなかった。
 生きる存在意義を与えてくれたのは白圭たち。
 此処で失わせはしない。

 篝火に背を向け、髪の毛を一瞬で羽へと変化させ、低空飛行する。
 それは、走るより明らかに早かった。
 篝火は一瞬目を見張ったが、直ぐに走りだし想思を追いかける。

「失わせはさせない。白き断罪は僕の意義」

 泉の攻撃を想思は髪の毛で防ぐ。
 しかし、鋭利過ぎた泉の攻撃は、あっさりと想思の防御壁である硬質化した髪の毛をいともたやすく切り裂いた。
 足元まであった長い髪の毛は一気に、郁に切られた分を合わせて、腰より上の長さに断髪されてしまった。

「っ……」

 あぁ、なんて無力なのだろう。
 所詮出来そこない
 所詮失敗作
 所詮、成功作になど足元も及ばない
 あぁ、なんて無力なのだろう。
 想思は嘆く

「邪魔が入ったか」

 しかし、泉は二対一になったところで微動だにしない。
 あるのは、敵を殺すという心だけ。

 大切な存在に血を流させることなど許しはしない。
 守るべき存在を傷つけることを認めはしない。
 原因分子など、全て排除しよう。
 この手で。

 ――そのための力だ


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