X ――傷ついた心は癒せない……本当に? 真白な華は見つめる 外ではなく中を感じ 今にも散りそうなほど儚い華は確かにそこに存在した それは幻想でも幻でもなく、そこに存在した。 +++ 聖域、かつて世界の始まりと、最期の楽園と呼ばれたそこに二人の影が並ぶ。 「……君はいかなくていいのかい?」 「まだ、どうにでもなるさ」 「薄情だこと」 「俺を薄情にさせたのは“人間”だ」 「否定はしないけどね」 二つの影は会話する。 そこに生まれるのは人間への憎悪か。 「それに“罪人の牢獄”は滅びはしないよ。何故ならまだその時じゃないから」 「それもそうだね、何故ならまだ私らが敵に回っていないから」 自身過剰ともとれる態度を示す。 「その通り。まだ時期じゃない限りは味方でいよう。愚かしい政府に従おう」 ふと、悲しげな瞳をする。 青く透き通るような瞳に陰りがさす 「こんなにも美しい大地を穢した……」 眼の前に広がる風景を眺める。 此処は最後の大地 長く銀色の髪は靡く 最後の大地に慰められるように優しい風が周囲を覆う 「僕らが味方であるうちに精々満喫するがいい。“最期の時”を」 [*前] | [次#] TOP |