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10月10日、銀さんの誕生日。
「何にするか決めた?神楽ちゃん」
江戸を回って銀さんへのお祝いの品を用意する私達。
サプライズって事で、銀さんには秘密にしてるんだ。
「私は酢昆布がいいアル!甘いもんばっか食わせちゃ身体に悪いネ!」
「ふふ、そっか」
神楽ちゃんは自分の好物をプレゼントするらしい。
新八君はケーキを買いに別の所にいるから、今は私達二人だけ。
私は何にするのか、いまだに決められない。
「私は何にしようかな…」
ぐるぐるぐるぐる、あちらこちらを回ってはこの台詞。
文句も言わず付き合ってくれている神楽ちゃんにお礼を言わなくちゃいけない。
銀さんの誕生日だしプレゼントだから、特別なものにしたい。
銀さんの喜ぶ顔が見たいんだ。
「…あ!ねえ見てヨ!」
そうこう唸り悩んでいると、神楽ちゃんが突然、私の服の袖を掴んで言った。
「どうしたの、神楽ちゃん」
「銀ちゃんの好きなもんがあるネ!」
え、どこに?と思って、指差す方を見てみる。
神楽ちゃんが言った銀さんの好きな物。
「…お酒?」
「そうネ!日本酒アルヨ」
「銀ちゃんに、これを?」
「プレゼントしたら良いアル!」
神楽ちゃんの突然の提案。私は訳が分からず、首を傾げる。
プレゼントにお酒?
「決まらないのなら、あえてこれにしたら良いアルヨ」
「でも…銀さんの誕生日なんだし、もっと特別なのにした方が良くない?」
「違うヨ!だからこそアル!」
にかっと笑う神楽ちゃん。私にお酒を渡し、買う気満々でいる。
「飲み過ぎは良くないヨ。だから一瓶だけネ」と可愛らしい笑顔で言った。
「今日みたいなめでたい日こそ、のんびりする時間が必要アル。
騒ぐのも良いけど、その後の休み時間が大切ネ」
「…つまり、その時間を私が用意しろと?」
「そうアル!銀ちゃんとゆっくり過ごして欲しいネ!」
今日は私達万事屋4人で騒ぐ予定だから、その後の時間に銀さんと二人で過ごせ、という事らしい。
私は神楽ちゃんの案になるほどと納得しつつ、私の銀さんに対する気持ちも全て分かってくれているんだと理解した。
とても嬉しく感じたし、後で神楽ちゃんにはたくさんお礼を言わなきゃいけないね。
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