彼岸花のような君 5
「―は?」
「さっきから女の胸を触って…調子に乗らないでよね!」
度が過ぎるこいつについ俺、ではなく私はキレた。
なんて失礼でスケベな奴なの!
「…」
「どんな奴にも礼儀ってもんがあるでしょ?忘れてないでよね!」
「…もしかしてさ、それが素?」
「!」
本気でびっくりしたのか、神威は私を指さしてそう言った。
悪い?いつもはああでも一応は女なの。
「わあすごいや。ギャップあり過ぎ」
「余計なお世話!」
この口調になったのはどれくらいぶりだろう。
私でもよく分からないけれど、胸が熱くなった時とかこうなるのよね。
3Zの奴等でも知らない私のもう一つの一面。
知られたくなかったのに、よりにもよってこんな奴に…!
「やっぱ君女なんだからさ、その方が良いよ」
「なっ」
「"俺"とか似合わないし中二病くさいしさ」
あんただけには言われたくないんだけど?
「何も教えてくれなくても自分で調べちゃうから良いもんね。
次会う時は花でも持っていくよ」
「ちょ、ふざけないでくれ」
「ふざけてなんかないさ。この気持ちは本物だよ」
ずいっと顔を近づけて、あの気持ち悪い笑顔で見つめられながらそう言われた。
いや全く嬉しくないんだけど。
不良に好きだと言われて舞い上がる人間ている?
はっ、ねーよ。
「好きだよ」
「う、うるさい!」
いい加減手を離してくれないかな。
私はあんたなんか好きじゃありませんから!
――――
「……」
「やあ」
その翌日、神威はこの銀魂高校に現れた。
調べたとかマジだったの?
「帰れ」
「あはは。まあそう言わないでよ」
こいつは本当に片手に花を持っていて、"はい、あげる"なんて言ってさし出した。
これって…
「なんだこれ、彼岸花?」
「そうだよ。君にぴったりでしょ」
「意味が分からん」
一輪の彼岸花。
なんでこんな花を選んだんだ。つーかいらねえよ。
「彼岸花には"情熱"とか"自立"の意味があるんだよ。なんとなく君にあってると思ってさ」
「…あのさ」
「ついでにもう一つ。
"再会"って意味もあるんだよ」
意味にあわせて選ぶなんて意外とこいつはロマンチストらしい。
あれ、そうなのか?
なんだかよく分からんが、別に情熱なんてないし。
「それを言うなら神威の方が似合ってる」
「そうかな?」
ある意味一番自立してんのはこいつだと思う。
「…ま、それはどうでもいいとして」
「あ?」
「また喧嘩しようよ。
俺が君をシメた後は、その亡骸にまたその花を添えてあげるから」
「死ぬ前提かよ!」
彼岸花のような君
(さあやろう喧嘩しよう)
(ふざけんな帰れ!)
(やだなあ。女口調の方がいいって言ったでしょ?
折角"名前"って可愛い名前があるんだから)
(…何処で調べたんだよ)
未夜斗様に捧げます。ごちゃごちゃですみません。
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