彼岸花のような君 3
――――、
場所は変わって、校庭。
「本当に良いんだな?」
「もちろん」
神威って奴が阿伏兎の代わりになるとか意味分かんねえ事を言ってきた。
喧嘩してくれるなら別に良いけどよ…こいつ本当なんなんだ?
ニコニコ笑って楽しそうにして。
でもかすかにどす黒い何かが垣間見える。
俺だってだてに喧嘩してきてねえ。こいつの強さくらい肌で分かるよ。
こいつは…強い。
「じゃあいくぞ」
「いつでも」
あいつの元へ走り出して、拳を握る。
そうすりゃあ瞬時によけやがっていつの間にか背後へ。
「!」
速い。そして瞬発力も高い。
「(やっぱこいつ強者だな)」
でも、俺だってそう簡単にはやられねえよ。
どれだけの男と喧嘩してきたと思ってんだ。
俺はやられねえようにと、身体をふせて地面に手をついた。
「っ!」
そして片足で勢いをつけて蹴り上げた。
ジジイに習ったカポエイラ術ってやつ。
神威って男は見事にそれをくらい、よろけてた。
「…へえ」
でも全然平気そうな顔してて、いつもの通り楽しそうに笑ってた。
―いや、違う。
「げっ」
さっきまで閉じられてた目が開眼しやがった。
これはヤバイ。オーラが増した。
「俺の動きが見えたなんて…すごいね君」
そう言ってるこいつの表情は本当に楽しそうだ。そして嬉しそう。
心の底から喧嘩が好きみたいな感じ。
「ねえ、もっとやろうよ」
「…当たり前だ」
でもこんな事じゃ引き下がらない。喧嘩は俺も嫌いじゃない。
こんなにオーラのある奴に出会えたのはどれくらいぶりか…。
「覚悟しろ神威」
「君もね」
今度は同時に襲いかかった。
こいつは動きが速くておっかない。
少しでも油断したらやられそうだ。
放つ殺気にも圧倒されそうになる。
…でも、そうこなくちゃな!
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