新世界
2011/08/11 21:38

ネタメモ
・グリーン恋人設定
・現代日本
・暗いはてしなく暗い
・主人公酷い
・名前固定→ソウ



「グリーン、帰ろう」

HRも終わり解散の号令がかかったのを確認して、隣のクラスのグリーンの元へ歩み寄っていく。
スクールバックを背負いおお、と返事をするグリーンの顔をこっそり盗み見た。

「?何やってんだよ、早く帰ろうぜ」

最近じゃすっかり夏の陽気もどこかへ消えうせ、季節は秋になった。
温度も下がり日も落ちるのが早くなったせいか既に外に浮かぶ太陽は落ちかかっていて、
赤く赤く俺と、そしてグリーンを照らし出している。
夕焼けの空を黒い小さな点が飛び回っているのは、きっとポッポかオニスズメだろう。
此処最近、鳥ポケモンのみならずその他のポケモンが騒がしいのは今の日本の何かが関係しているのか。
そんなこと、ただの高校生の俺がしるわけもないのだけれど。


「そういえば、レッド最近どう?」

俺と同じ3組のマサラのレッド。
生まれも、故郷も俺とは違うレッドだったけれど以前、まだ彼が学校へ来ていた時は随分お世話になった思い出があった。
最後に彼を見かけたのは1学期の時だったっけか。赤い瞳が特徴的で、忘れようにも忘れることができなかった。

「レッド?ああ、アイツのことか。まだ気にしてんのかよ」

あからさまに、グニャリと顔を歪めるグリーンについ顔を俯かせる。
知っていた、気がついていた。彼・・・グリーンが、同じ生まれの同じ故郷である幼馴染のレッドをよく思っていないことくらい。
まるで対照的なレッドとグリーン。
俺はレッドの事を深くは知らないけれど、それでも二人が正反対の対照的存在だということには気がついていた。

「もういい、帰るぞ」

「あ、ああ」

さっさと歩き出してしまうグリーンの背を追いかけて歩き出す。
どうやら機嫌を損ねてしまったようで、早歩きで一言もしゃべろうとしないグリーンについため息が漏れた。





高校3年生の今、俺たちには進路を決める義務がある。
そして、それは・・・ほぼ、赤の他人の手によって決められているも同然なのだけれども。

「俺さぁ、軍に入ることになった」

「え?」

ぽつり。
まるで呟くように、グリーンは言葉を発した。
今まで全く違うところにあった意識と視線をグリーンに向け、グリーンの次の言葉をただ待った。

「さっき、レッドの話しただろ。アイツも、だとよ」

「・・・なんで?いくらなんでも早すぎじゃねえの」

この国には、軍隊が存在する。
数多のポケモンを利用し、他の国と戦争なるものをするのだ。
しかし今そのポケモンたちを使いこなすトレーナーが致命的に少ない。
・・・そう、俺たちの将来。それは、戦争へ駆り出される軍隊の人間になる事だった。

「俺も、アイツもポケモン使いだっていう事がどっからか政府の方に漏れたっぽい」

「・・・、」

今のこの国の現状。それはそれは酷いものだった。
外国からの使者に荒らされた土地や激減した大人たち。
昔までの戦争とはわけが違う。だって今此処にはポケモンという存在が在るのだから。
戦えないのは子供のみ。女も男も関係なしに駆り出される。子供だって、ポケモン使いと政府にバレてしまえば戦争へ。
どんなに小さくとも。たとえ、小学生であろうとも。

「日曜、マサラに迎えが来る」

ピタリと歩む足を止め、俺と向き合うグリーンにきつく口を結ぶ。
日曜。今日は、金曜。
緑色のその瞳を見つめ俺はどうするべきか悩んだ。
どうすれば、いいのか。行くなと呼び止める?ただ無言を貫き通す?そっと背中を押してやる?
やぱり、わからない。俺にはわからなかった。

「ソウ」

数歩歩いて近づいてくるグリーンはやがて、俺の腰に腕を回しそして抱きしめた。
男の力強い腕の力に眉を顰める。グリーンとの距離が零になり、そして気がついた。

(焼けた匂い・・・)

焦げ臭い、その嗅いだ事のある匂いにある一つの考えが浮かび上がった。
もしかして、コイツ。

(既に、・・・)

きっと、そうだろう。
既に彼は戦いの場へ足を運んだ。もう、決めたことなのだ。
ならば、俺に出来ることは一つだけ。

「グリーン」

「待ってろ、俺が帰ってくるまで」

顔は見えない。しかし、動きは全て伝わってきた。
掠れる声で囁くセリフはあまりにも弱弱しくて、そしてたくさんの思いが詰め込まれている。
そう、俺はそっと背中を押してやればいいのだ。そっと、そっと。壊れ物を扱うかのように。

「好きだ」

グリーンの真っ直ぐな思いと視線を受け一瞬身体を固めた。
そして、直後には自らの唇にやわらかい感触。きっと、口付けでもされたのだろう。
ただ押し当てるだけの唇に俺はスウ、と目を細めそしてグリーンの背に腕をまわした。

「死ぬなよ」

「ああ、・・・わかってる」

ニヤリと口角を上げて、いつもの調子で会話をする。
グリーンは俺から離れ、じゃあな。と言い放ち、そして帰路を辿って行った。
だんだんと小さくなっていくグリーンの後姿をボウと眺めながら俺は制服のポケットから携帯を取り出す。
銀色のフォルムをスウっと撫で、そして電話帳を広げる。
田中。その項目を選択した。

「・・・もしもし、ボス。俺です、3番です」

機械音の後に繋がった、敬うあの人への電話に胸が鳴る。

「二名導入可能です・・・ええ、はい。以前紹介した。」

「それでは失礼します」

夕焼けに赤く染まった空を見上げ、電話を耳から離した。
ポッポが、オニスズメが鳴いている。
自然が悲鳴をあげている。

でも、この国はきっと立ち上がらない。

「可哀想なポケモン」

支配された弱い弱いこの国に、一体どれだけの涙が地へ落ちるのだろうね。

「可哀想なニホン」

まだまだこれからだ。
ニホン国には、ボスのため、ボスの夢のため・・・働いてもらうとしましょうか。

「可哀想なグリーンと、レッド」

ニヤリと、口角を上げて笑った。

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