そもそも、リベアはあまり普通の剣を使ったことが無い。
ギグと出会うまでは木刀しか与えられず、ギグと出会ってからはあの魔剣のみを使い続けたのだから仕方ないといえるが、やはり気になる所があったようだ。

「…うん、慣れてきた」

コモンソードを地面に突き刺し、リベアはふっと息を抜く
本当になんの変哲もない剣だとヴァルバトーゼは言っていた。不思議そうな顔を多少していたが、『話したいなら聞くが、話したくないのなら聞きはしない』と言って、快く貸してくれた彼の優しさはありがたい。普通の剣を使ったことが無い、などと言えば心配される可能性もあるからだ。申し訳ないと思いながらも、リベアは黙っていることにした。

あの剣がギグとの繋がりの証拠だった頃、リベアは戦いの中でもそれを支えとし、そして依存していた。ギグが肉体を得るに至ったことでそれは薄れたが、それでもギグ自身があの剣になれてしまう世界にいるからか、時折ギグに手を伸ばしそうになることがある。
これではいけない。そうリベアはずっと思っていた。

(無傷に近い、かな)

これならいけるかもしれない。魔物の死骸がごろごろと転がる中、リベアは満足げだった。

(これなら、ギグに迷惑をかけたりしなくてもいい)

肉体が別れてから、ギグは戦闘に関して少し過保護になった。
曰く、自己治癒は使えるが、他者を癒す術をギグは詳しく知らないらしい。つまりリベアが負傷した場合、もうギグは治療できないということになる。そしてリベアには、自分の怪我をある程度まで無視する性質があった。心配されて当然だが、悲しいかなリベアは無自覚だ。

(頼らなくても、ちゃんと戦える)

ハーフニィス界や邪悪学園で頼りっぱなしだった分、この世界では自立して、肩を並べて戦いたい。心配はかけたくない。
リベアの願いはそれだけだ。が

「よそ見してんなよ馬鹿が!」

聞き慣れた声と、魔物の断末魔が響く。慌てて振り返った先では、先程の戦いで死に損なった一匹が、リベアに襲い掛かる直前でギグに切り捨てられ崩れ落ちていく所だった。

「ギグ?!」

何故ここに居るのか、と問おうとするリベアの前に降り立ったギグは、自らのどうしようもない相棒を鋭く睨みつけた。

「相棒…戦いてぇなら俺を呼べっつったよな?」
「あ…その、今日は」
「吸血鬼から聞いたぜ。なんの変哲もない剣で?一人で?真正の馬鹿かお前?!」
「か、勝ったのは勝ったんだよ?」
「不意打ちくらいかけた奴の言う台詞かよ!俺様が来なかったらどうなってたかくらい分かるだろーが」
「う…」

正論だ。ギグのくせに正論すぎる。リベアは俯いて唇を噛んだ。

(また迷惑かけた。心配させた)

「お前はおとなしくあの剣使ってりゃいいんだよ」
「…でも」
「迷惑だなんだウダウダ考えてってからウゼーことになんだよ、ばーか」
「〜〜〜っ」

全てバレていた。そのうえで馬鹿にされた。もう恥ずかしくて絶対に顔は上げられない。
そう、真っ赤になって下を向くリベアは気づかない。ギグがふっと表情を緩ませて、いつにない(それこそヴィジランスのような)優しい瞳をして、彼女を見ていたことに

「俺もあれは嫌いじゃねぇよ
…次呼ばなかったら、どうなるか分かるよな?」
「……はい」
「よし」

周りは死々累々、リベアは俯いていたため、誰も見てはいなかったが、ぽんぽんとリベアの頭を撫でるギグの表情は、それはそれは嬉しそうなものだった。






 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ギグが居る時ならこういうので戦ってもいい?」
「ぜってー無茶しねぇなら考えてやるよ」
「本当?!」
(…嬉しそうな顔しやがって…)

ギグ様だって融合時代がなつかしくなったりするから魔チェンジも(リベアちゃん限定で)嫌いじゃないとか、でも努力する姿と理由が可愛いなとか
でもそれ以上にほっとけない
…我が家のギグ様、甘すぎるよな
超抜無敵なギグ様も書きたい




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