「昔話、か」
「そう!馴れ初めは分かったけど、その後とかないの?
あと、フェンリっちから出会う前の話とか聞いてない?」

キラキラと瞳を輝かせるフーカに迫られるヴァルバトーゼを、リベアは少し遠くから見ていた。
こうなった理由は単純だ。リベアはこの党首とその執事に、珍しく興味を持った。その絆はどこか魂の繋がりとも言えるようで、どこか美しいと認識したリベアがそれをフーカに話すと、なら二人の関係なんかを聞きに行こう。と、いつものようにフーカが勇んだ。
リベアは絆に関わる話を、フーカは人格が出来すぎている二人の過去を聞こうとしている。
ならばターゲットになるのは、聞き出すのが面倒な執事の方ではないのが当然だろう。
だが

「…残念ながら、話せるようなものは一つもない」
「え?」
「今の俺となった経緯はもう知っているだろう?そしてフェンリッヒとの出会いの話も…400年前からこの関係は変わってなどおらんのだ。そして、俺はフェンリッヒの過去を知らん」
「えぇ?!」
「………」

過剰な反応こそしなかったが、リベアもフーカの驚愕に心中同意していた。
完璧に知るからこその絆ではない。なら、あれほどの強さを、美しさを感じるのは何故なのか
説明を加えようとするヴァルバトーゼを、リベアは食い入るように見つめた。

「だが同様に、フェンリッヒも暴君と呼ばれた時代の俺しか詳しくは知らんだろうな。
俺にとっての仲間は"今の"フェンリッヒだ。過去を知ったところでその事実は変わらん。ならば知る必要はないだろう?
あやつが過去に苦しんでいるなら、共に背負ってほしいと言うのならば話は別だがな」
「へぇ…なんだろう、珍しくヴァルっちが大人に見えるわ」
「それはどういう…まぁいい
小娘よ、その歳で過去を振り返ろうなどとしていては、前には進めんぞ?」
「なによ、ちょっと聞いてみただけじゃない!
でもいいわ。友情!って感じも悪くないわよね〜」

帰りましょ、リベアちゃん
そう呼び掛けられるまで、リベアはクール系魔法でも当たったかのように、固まって動けなかった。

(すごい)

知らず、頬が緩む。
悟られないよう、リベアはヴァルバトーゼに一礼し、フーカに付いて行くため背を向けた。

(わたしとギグも、なれるかな)

知るのではなく、理解しあうということ

(でもそれなら)

もう、出来ているかもしれない。





 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
しれないじゃなくて出来てます
きっと執事と閣下の絆と、リベアくんとギグ様の絆は似てる
だからリベアちゃんでもいいっしょ




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