まだ早い時間帯
研究に没頭して徹夜した清々しい朝を一人で過ごしていると、インターホンがぴんぽーんと高い音を響かせた。
こんな時間に誰だ。グリーンが起きたらどうしてくれる!
そうは思うものの、怒りより嫌な予感ばかりが募る。なんだか寝ていられないことが起こりそうな気がしてならない。
再び、インターホンが鳴った。慌てたオレは、誰かも確認せず玄関に走っていった。

「はいはい。どちらさま゙っ?!」

最後に普段なら付かない濁点が付いたのは、ドアを開けた瞬間に(おそらくインターホンを押しただろう)謎の人物が突撃して来たせいだ。
どたん!と勢いよく押し倒されたような姿勢になって、後頭部の痛みから数秒で復活したオレは、どうにも覚えのある重さをした不審者を見た。

「………」
「今度はなんだよ」
「 ・ ・ ・ ・ 」
「は?」

口だけをぱくぱくとさせて、不審者ことファイア様はなにかを訴えようとしていた。言いたいことはわからなかったが、冗談でこんな面倒をファイアはしない。

「声が出ないのか?」

妥当な線で質問してみると、まあ嬉しそうにこくこくと頷く。それでも副音声的に『リーフにしては上出来だね』と聴こえるあたり流石ファイアだ。にしてはってなんだよ

「あ〜…とりあえず紙とペンが要るか。上がれよ」

こくりと頷く。なんだかレッドと話してるみたいだった。
リビングにあったメモ帳とペンを渡すと、『珍しくナイスだヘタレ』と早速文字が喋りだす。だから珍しくってなんだよ。ヘタレ…はいいんだよ今の問題じゃない。

「なにがあったんだ?」
『わからない』
「…風邪、じゃないのかよ」
『熱がない。喉以外問題ない』
「それじゃわかんないって」
『使えないやつめ』

書いて見せてくるのと同時に、『けっ』っと言っているような表情になる。ちくしょう(それも可愛い)
医者には行くのかと聞いたら、『診察の時間的に、行けば夕飯の仕度が遅れる』と主夫らしいことを文字が言った。ファイアのレッド馬鹿は治しようがないから、ツッコミは入れないし反論もしない。

「んじゃどうするんだよ」
『これで乗り切る』

これ、とメモ帳を指したってことは筆談で乗り切るってことなんだろう。つまりファイアの中に筆談の選択肢が無い状態でここを訪れた時の問題(どうやって意思を伝えよう?)はもう解決してるわけだ。
残念ながら、そんな状態で来たせいで新たな問題が発生したのをファイアは知らない。プラスマイナスは0なんですよ、ファイア様

「なら大丈夫だろうな」

頷いて、とりあえずファイアの右腕を掴んだ。は?と出ないくせに口が動かして、次に離せと抵抗を始める。だから声出てませんよって

「後でレッドが起きたら連れて来るから、今日はこっちに居てくれないか?」

なんで、とまた口を動かして、今度は悔しそうに下唇を噛んだ。ああもうそういうことをするから

「心配で、徹夜明けなのに寝れそうにないからです」

目の届く所に居てくれませんか?
傷付ける前にと下唇に指を這わせて、お願いをしてみる。
右腕の拘束を解くと、ファイアはまず

『徹夜するなバカ』

と荒い文字で怒鳴ってみせた。





 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
一応了承してるんです。ツンデレじゃないから心配したらちゃんと言います。




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