成長していないのは内面くらいのものだ
事実グリーンの相棒が雷の撃ち合いでレッドの相棒に勝ったとき、恥じらいもなく大喜びして、悔しそうに眉間に皺を寄せる彼女の額をぐりぐりと押してからかう姿は、決して大人のそれとはいえなかった。
頬を膨らませて10年の経験差は仕方ないと訴える彼女にそれを覆せるだけの才能があることは分かっている。だからこそグリーンはジムトレーナーを勧めた。

シロガネ山には行かせまいとグリーンはバトルを挑み、勝った。その条件を呑んで戦った以上レッドはそれに従わなければならない。
野生の強力なポケモンとのバトルができなければ、残るはトレーナーだけ
しかし彼女の周りに居た者は皆レッドを様々な意味で越えてしまった。コトネに見下ろされる日が来るなんて、と嘆いたことはグリーンしか知らないのだが
ともかく、選べる選択肢は再び旅に出るか、グリーンの提案するジムトレーナーかの二つ
なんとか自分の手の届く所に居てほしいと、グリーンは必死に修業の旅に出ようとするレッドを説得し続けた。
結果、新しいポケモンやその技と特性、バトルスタイルの変化などのレッドの感覚や知識に無いものを教えるための先生をする。という条件で彼女をジムトレーナーとして雇うことに成功したのだ。
そして彼の思惑通り、古いスタイルのそれでありながら現代の戦術を越える戦いを見せつけるレッドは、さながら神話の戦女神だと誰かが言う。グリーンもそれに頷いた。
あとは多少足りない知識と経験さえ埋まれば、彼女は再び頂点として君臨することだろう。やはりレッドにはバトルが似合うと、半ば兄か父の心境を持ちはじめた自分にグリーンは苦笑する。

しかし所詮"半ば"だ。レッドを邪な目で見る自分が消えることはない。
好きだ。そう思っていただけのあの頃とは違う、慰みに女を抱いたことのあるような穢れた大人は、レッドをそういった意味でも求めている。
誰も知らない身体に自分だけが痕を付けてしまえたらと、浅ましい願望を抱くのだ。

「ロリコンってことね」
「うるせぇよ。
…幼馴染と10も離れるなんて、誰が想像できんだ?」
「分かってますよそれくらい
でも実質差がつきました。レッドさんは純粋にグリーンさんが好きで、貴方は純粋のしの字もない欲付きの愛をレッドさんに寄せてる
あと2年だけ待てばいいんじゃないですか?」
「…無理、だろうな」
「ロリコンの堪え性なし。最悪ってことね」

にこりと綺麗に微笑みながら毒を吐くコトネ
身体こそ成長し、美人と言えるほどになっていても、それこそレッドを取り合っていがみ合ったあの頃と変わりはない。
なのに何故この想いのありようは変わってしまったのか
ため息を吐いてテーブルに伏せたグリーンは慰めてくれと冗談のように唸り、コトネははいはいとその頭をやわく叩く。
この場でただ一人、レッドがそれを覗いていたことを知らないグリーンはただひたすら、ごめんと震える声で呟いていた





 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
グリ→←レ♀とコトネの組み合わせは最強




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