幼い頃に亡くした親友が自宅の前に倒れている。
もうあれから10年が経つというのに、まだ最後に見た姿を覚えていること、そしてこんな幻覚を見てしまうことに、グリーンは自分へのため息を禁じえない。どれ程想っていた―いや、いるのかと、ほんの少しの希望から膝を着いて伸ばした手は、幻に触れる前にそれが揺れたことで固まってしまった。

相変わらず、抜けるようなと表現するのが一番であろう白い肌とまろいかんばせの、閉ざされていた瞼と長い睫毛が震えている。
もうすぐ見られるのだろうか、彼女しか持ちえないあの赤い瞳が
そう期待する中途半端に伸ばした手を、彼女の頬にやった。すればすぅっと、寝起き特有のぼんやりとしたあの赤が現れる。
打ち震える思いだ。幻ではない。彼女が消えたあの山で見つけた帽子を握りしめ、また雪崩でも起きればいいと、自分を呑み込んで彼女と同じ場所に連れていってくれと呪詛のように叫んだ再会の願いは、10年を経て奇跡として返ってきた。
レッド、と名前を呼べば虚ろな瞳に意思の光が輝いて、ああこれが見たかったと高く鳴る心臓を鷲掴んででも落ち着きたい。
このまま抱きしめたら露呈してしまいそうな程だから。でもあるが、10年で成長した落ち着きのある自分でいたかった。レッドの前で見栄を張る癖こそが、変わっていない何よりの証拠だということにグリーンは気付かない。

「…グリーン?」

むくりと起き上がり、目を一度擦ってぱちぱちと瞬かせる
そんな愛らしい少女の仕種に、擦るなとよく叱れた日々と自分を、グリーンは思い出した。
心は彼女と一緒に死んだと思っていた。仕事に没頭して、旅の空で見た彼女の瞳とよく似た輝きを宿した、幼い挑戦者と対峙することにちくりと痛むだけだった胸に、今は歓喜と幸福が零れていきそうな程に満ち満ちている。
もう何故いなくなったのか、あの頃の姿のままなのか。全てどうでもよかった

「おかえり、レッド」

失った全てが今此処に在る。
大人気ないねと微笑む、片腕で囲えてしまえる少女の薄い肩に顔を埋めて、うるさいと悪態を吐いた。
泣いて縋る情けない自分まで帰ってきたことは、多少残念ではあるけれど

「…ただいま、グリーン」

耳を擽る懐かしいこの声の主さえ居れば、もうなんでもいいのだ。





 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
レッドさん雪崩に巻き込まれる→死にかけをミュウが助けようとする→とりあえず"時間"の枠の無い(身体の時間が経過しない=死なない)世界に放り込む→負担をかけないようにゆっくり治療されたレッドさんが目を覚ましたときには、現実で10年が過ぎてた
こうして、グリーンは幼なじみのはずなのにロリコンのレッテルを貼られるはめに
あ、まだ付き合ってません




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