僕は目覚まし時計というものに対して、何時できたかも分からない耐性がある。

やたら五月蝿いやつ、スイッチを押しても後ろの元を切らない限り鳴りつづける、スヌーズとかいうやつ…小学生の頃からいくつもの目覚まし時計に勝ってきた僕だけど、一つ、絶対に起きられるものを最近見つけた。


『ピッカピカ、ピカピッカ♪』

飛び起きる。これが僕にとって当然の反応。

窓から眩しい朝日と熱気が差し込む夏休みにも拘わらず、メール着信を知らせるピカチュウの歌は元気でとてつもなく可愛い。
…けど、まだ寝たい。部屋の時計をぼんやりと見ればまだ7時だ。
なんてことだ、普段より4時間も早く起きてしまった。

だいたい誰だこんな非常識な時間に送ってくるやつは
知り合いなら会った瞬間にマッハパンチしてやる。迷惑メールなら…とりあえずグリーンでも殴ろうか。

ピカチュウが歌い終わるのを待ってから携帯を掴む。身体を動かすのが億劫で、幾分無理な体勢で腕を伸ばしたせいか間接から嫌な音が鳴った。
…これも相手のせいにカウントしておく。
足が出るか手が出るかは気分として、さて何発入れてやろうか…

カチリと開けば受信を知らせてくれる画面の中の愛らしいその姿
こっちに引っ張ってこれたらいいのにな…

クリックすると消えてしまったピカチュウの代わりに、不機嫌の正体の名前が表示される。

「……グリーン…」

我ながら低くおどろおどろしい声が洩れた。
まどろみの平穏を侵したのは世話焼きな幼なじみらしい。
登校日ならともかく、僕の寝起きの悪さと起こされた場合の不機嫌さを知っている彼は休日、しかも朝に連絡なんか寄越さない。
いつもなら、昼過ぎに用件なりお菓子なりを直接持ってくるはずだ。

よくよく考えるとおかしい。受信ボックスの項目を押す指に変な力が入った。


件名:頼みがある

悔いを残したくないと、思った。
聞いてほしいことがある。俺の家に来てくれないか?


何かあったんではないらしいことに一先ず安心した。けど、変だ。文面がなにか違う。
こう…文体からも滲む残念具合がない。
言わないと後悔するような話って、何だろう?






 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
10分でだーっと書いて飽きた




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