緑の目には緑色で景色が映るのか
馬鹿な問いに真面目に答える気はさらさらないが、正直に言えば俺が馬鹿みたいになるんだろう
全部モノクロみたいだ、なんて青春を謳歌すべき高校生が言うべきではない。
だから、俺はいつも曖昧に笑うことにしていた



流れていくのは言葉、人、風景
どれも俺にとって価値のあるものには思えなかった。
幼いころからいい点数を取ることだけが俺という存在の生きる意味で、しかしそれの無意味さを知って飽きてしまった。
誰も俺を見て褒めていたわけじゃない、見ていたのはただの数字だけだ。今までの自分はひどくくだらないことをして生きていた気がした。
点数だけを見る全ての賞賛と同時に生きる意味も捨てて、今の俺はからっぽのようだ。
…さて、虫食いになったこのテストを紙飛行機にでもしてやろうか
まさか70点なんて点数を取る日が来るとは、入学当時の俺には想像もつかないんだろうな


「文系苦手なんスか?」
「まあな。登場人物の心とか、いまいちピンとこねぇんだよ。今まではテスト前に範囲の中身全部叩き込んでたから、問題なかったんだけどな…」
「へぇ…で、その点ってことはつまりそれ以外は正解してるってコトですかネ?」
「あー…そうなんじゃね?」
「いっやみー」
「いっやみー」
「うっせぇ」

これも想像できていないだろうな、友達とダラダラ過ごす当たり前の風景
なんにも無くなった代わりがこの後輩兼友人なら、捨てて本当によかったと思える。こうしていると、からっぽが少し満たされるような感覚がするからだ。人との繋がりが人間の精神にとって多大な支えや寄り処になるという漫画みたいな現象は実在していた。
でも、まだなにか欠けている。今この瞬間の世界には色が付いても、こいつらが居なければまたモノクロに戻ってしまう。


「お前らの知り合いに文系、特に現国が得意なやついねぇか?」
「グリーン先輩よりアタマいいやつ探す方が大変なの知ってるっしょ?」
「うーん…あ、一人居るかも。知り合いじゃないですけど」
「マジか、誰だよ?」

聞けば何故か後輩2人…コトネとゴールドは後ろを向いてこそこそと相談し始めた。こそこそしていてもゴールドの声だけは丸聞こえなのがある意味面白い。
そして、きっと自分の中で一番神妙な顔を選んだのだろう。怪談でも話し出しそうな顔でコトネがゆっくりと語りだした。

「…この学校のテスト成績って張り出さないじゃないですか」
「個人配布だな」
「はい…だからこれは噂程度の話なんですけど、実はグリーンさん以外にも学年一位が居るらしいんです」
「マジで?自慢じゃねぇけど俺、一年の間はほぼ100点だったぜ?」
「インテリは滅べばいいッス
は置いといてもマジらしいッスよ?」
「第二書庫にいるって噂もあります」
「第二書庫ぉ?」

信じられない俺の心境は、まずこの学校の校舎の姿を見なければ納得できないだろう。
この地域最高の偏差値と最大の校舎を誇る我が校には、敷地内に図書館が存在する。
もとは図書室だけだったらしいが、俺が入学する前の年に設立されたんだそうだ
図書室の蔵書は図書館に移され、寄贈された本もあって蔵書数もなかなかの数になったわけだが、その中には到底高校生が読める内容ではない本もあった。専門書とかな
そんな本と、進学校生は読まないであろうファンタジー小説なんかが収容された"本の墓場"…それが第二書庫、元図書室だ。
確か管理の司書以外立入禁止で、以前学校の怪談を作ろうとしたやつのターゲットになって一悶着あったとかなんとか
とにかく、生徒は入れないはずだ

「んなとこに居るわけねぇだろ
第一クラスとかわかんねぇのか?」
「…いないんスよ」
「は?」
「興味本位でダチが噂の人のクラスを見に行ったんスけど、いなかったうえに誰も行方を知らなかったんス」
「なんでも噂の人は一限だけはきっちり受けてから失踪するとか」
「へぇ…変人もいたもんだな
で、そいつの名前は?」

「レッド、っていうらしいッス」






 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
続いたらいいなぁ




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