「愛してもらうには条件が必要なときもある」

そう言った彼女が唐突に口を開くことはよくあることであり、しかし声を聴けるチャンスは貴重だ。
なぜなら彼女は自分が喋りたいときにしか喋らず、しかもそのタイミングに人が居るかなど気にせず言いたいことだけを語りだすからだ
以前此処に来た時既に一人で人間の本能について語っていたときは驚いた。そして誰も来ないいわくつきの書庫に感謝した
いや、彼女がいわくを付けたのだが

「既に人を愛していた神に愛を伝えることもままならず、勝手に覚えた嫉妬で引いた弓は自分の羽根に当たった。
罰は誰にであろうと平等だ」
「誰の話だ?」
「ルシファーの話、僕の話」
「お前が嫉妬?」
「したことないよ、愛しているから」
「誰を」
「教えない」

そうですかとため息に混ぜた言葉を最後に、俺の介在しない彼女の声は再びそのルシファーとやらの話を始める。
ゲームでしか聞いたことのない名前だ。確か6翼の天使だとか堕天使だとか…興味のない話だ。彼女の声が聞ければそれでいい

「力の誇示とすれば愚か者。嫉妬とすればこれもまた愚か者
どちらにせよ愛してもらえる存在ではなかった
…僕も、同じ」
「愛してもらえない?」
「…僕は魔女なんでしょ?」

ぱたん。彼女に不釣り合いなようで似合う大判の重そうな古書は終わりの音を告げた。今日は短くて残念だ。
魔女…そういえばそんな噂もあったな
『第二書庫には魔女が居る』とか…くだらない。

「魔女なら魔法使ってみろよ」
「…使えたら、いいのにね」
「誰に?」
「…だれかさんに、僕を愛してくれる魔法を」
「…ふーん」

なら俺はもうその魔法にかかってるってわけだ
そう言えたらどんなに楽だろう

「んじゃ、そんな傷心の本の魔女さんにプレゼント」
「…ありがと」

彼女が望むものは二つ
甘くて手を汚さないお菓子。本日はポッキー
そしてだれかさんの愛
二つとも、やれるのが俺だったらよかったのに

「…なんか読むもん探してくる」

そう逃げるように言って、整理もろくにされていない本の迷路に迷い込む。
テキトーな本を掴んで戻ってきたときには、彼女はポッキーを啣えて分厚いハードカバーの本を読んでいた。

『これが、君の愛ならよかったのに』

















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変な子が居るって噂の場所に興味本位で来たら不思議ちゃんに心を奪われ、以来お菓子を持って通うようになった普通っ子の話
レッドさんの声も思考も誰にも知られたくないLvまで独占欲がきてる危ないグリーンが書きたかったがよくわかんなくなった
レッドさんの二人称が君なのは幼なじみ設定じゃないからです




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