吸血鬼は血を吸う相手を探し、ウィル・オ・ウィスプは漂い往く
人狼は赤い月に吠え、魔女は嗤いながらべとべとのスライムや薬を撒き散らす。
世界はそれを望んでいる


「よぉ、『嗤わない魔女』」
「…こんばんは、『緑の狼』」

いつもの挨拶を交わして、異端児達は練り歩く者の列を抜ける。
世界はそれを望まない

「…魔女(ウィッチ)じゃないから」
「魔法使い(ウィザード)な、分かってるって」
「…なら、いい」

またいつもの会話をして、魔女は箒に乗らず、狼が四つ足で駆けることもない。暗い叢をひっそりと歩く二人を、暗い森が赤い月から隠す。誰にも見つからない静かは、今日に相応しくないと皆怒るだろう。
しかし、世界の望みと彼らの望みがすれ違っているのだから、摂理から逸れて然るべきなのだ。
人狼は赤い月よりも紅い瞳の魔女を愛し、魔女は薬品の緑とは比べものにもならない、宝石のような瞳の人狼だけを見つめていたかった。
嗤うべき魔女から外れ、金色の瞳の狼から外れ、異端児として生きてきた二人にとって、摂理とは無視して当然のものなのだ。
もちろん、世界はそれを望まない

「今年は人間に紛れてみるか?」
「…面白そう」

それでも一年に一度、まるで別世界の罰で離れ離れになった夫婦のように
逢瀬を重ね、なにをしようと笑いあうことを、二人は望んでいる






 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
なんだかなぁ




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