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[mokuji]
黒子がいつからそこにいたのか、村人は誰も知らない。
捨てた親の姿はもちろん、いつ捨てられたのか、どれほどの時間そこにいたのかすら誰もわからない。
村の外れといえど人通りが無い訳ではない。
日が昇れば田畑を耕しに行くものもいる。川へと繋がる道でもあったため、幾人かがそこを通ったはずだ。
日も天辺へと差し掛かった時おぎゃあと赤子の泣き声がしたときは皆驚いた。
なんの前触れも無くいきなり赤ん坊がそこに現れたと思ったのだ。それほどまで誰にも気が付かれなかった。
黒子は恐ろしく存在感のない子供だったのだ。
赤ん坊を包んでいた布切れになにか文字が書かれていたが、辛うじて文字の読める村長がテツヤと読み取った以外の情報はない。
最初は妖怪かの類いだと思われていたが、泣き止むと恐ろしく存在感が無いだけの正真正銘ただの赤ん坊だった。
どうせなにも出来ないのなら、と例のごとく紅様に捧げられることになる。
村人は逃げる心配もないためそのまま祠の前に捨て置いていった。
翌日、残骸を探しに行った村人は再び腰を抜かす程驚き、怯えた。
昨日のまま、祠の前にその子供が居たのだ。 あまりに幼すぎる生贄だったからかはわからないが、なんにせよ黒子は生きていた。
本来なら死んでいる、居る筈のない存在――“黒子”のテツヤは今日までこの村で暮らしてきた。
生贄として捧げられ生き延びたという稀有な存在となって。
捨てた親の姿はもちろん、いつ捨てられたのか、どれほどの時間そこにいたのかすら誰もわからない。
村の外れといえど人通りが無い訳ではない。
日が昇れば田畑を耕しに行くものもいる。川へと繋がる道でもあったため、幾人かがそこを通ったはずだ。
日も天辺へと差し掛かった時おぎゃあと赤子の泣き声がしたときは皆驚いた。
なんの前触れも無くいきなり赤ん坊がそこに現れたと思ったのだ。それほどまで誰にも気が付かれなかった。
黒子は恐ろしく存在感のない子供だったのだ。
赤ん坊を包んでいた布切れになにか文字が書かれていたが、辛うじて文字の読める村長がテツヤと読み取った以外の情報はない。
最初は妖怪かの類いだと思われていたが、泣き止むと恐ろしく存在感が無いだけの正真正銘ただの赤ん坊だった。
どうせなにも出来ないのなら、と例のごとく紅様に捧げられることになる。
村人は逃げる心配もないためそのまま祠の前に捨て置いていった。
翌日、残骸を探しに行った村人は再び腰を抜かす程驚き、怯えた。
昨日のまま、祠の前にその子供が居たのだ。 あまりに幼すぎる生贄だったからかはわからないが、なんにせよ黒子は生きていた。
本来なら死んでいる、居る筈のない存在――“黒子”のテツヤは今日までこの村で暮らしてきた。
生贄として捧げられ生き延びたという稀有な存在となって。
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