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そんな存在故に今まで再び供物に選ばれること無く、かといって捨てられることも――殺すことすら恐ろしくて出来ない存在として、ただ影のように生かされてきた。
しかし今回の旅人脱走の手引きを行ったことは村に対する裏切り行為だ。
「お前は今日まで育ててやった恩を仇で返すのだな」
「……そうなりますね」
感情の起伏が薄く、能面のようだと評されていたがこんな事態になってまでも何の感情も抱いていないような顔だ。
それに村人たちは当然激昂した。
「やはりあの時に殺しておくべきだったんだ!」
「そうだ! あの時生かせと言ったのは誰だ! そいつも責任を取るべきだ!」
「今回の供物はそいつにやらせろ!」
いつ、自分が生贄に選ばれるのか。村人達の顔は恐怖で引きつっている。
自分以外ならかまわない。自分だけは助かりたい。
そういう醜い姿がろうそくに照らし出されている。
「ならばあの時、紅様すら殺せなかった赤ん坊を殺せたのか!?」
「しかし――」
口汚く罵り合い明日捧げる贄を探す。
その様子を見ていた村長は、暫く考え込み、口を開いた。
「もう一度、テツヤを紅様へ差し出してしまえばいい」
広間がしん、と静まりかえった。
「それは、一度戻されているのに、ですか」
おずおずと一人の村の男が口を開く。
だれも考えても居なかったのだ。
一度紅様に見逃されたテツヤを再び捧げるということなど。
「また、そのまま戻って来たらどうするんです! そしたら次を選ばなければ――」「そのときはその時だ。あのときはどうせ赤ん坊故に見逃されただけの事。だから今回お前から声をかければ問題はなかろう」
――わかったな、黒子。
村人達のギラギラとした目が黒子を見据えている。
黒子は内心ため息を吐き「わかりました」と頷いた。
しかし今回の旅人脱走の手引きを行ったことは村に対する裏切り行為だ。
「お前は今日まで育ててやった恩を仇で返すのだな」
「……そうなりますね」
感情の起伏が薄く、能面のようだと評されていたがこんな事態になってまでも何の感情も抱いていないような顔だ。
それに村人たちは当然激昂した。
「やはりあの時に殺しておくべきだったんだ!」
「そうだ! あの時生かせと言ったのは誰だ! そいつも責任を取るべきだ!」
「今回の供物はそいつにやらせろ!」
いつ、自分が生贄に選ばれるのか。村人達の顔は恐怖で引きつっている。
自分以外ならかまわない。自分だけは助かりたい。
そういう醜い姿がろうそくに照らし出されている。
「ならばあの時、紅様すら殺せなかった赤ん坊を殺せたのか!?」
「しかし――」
口汚く罵り合い明日捧げる贄を探す。
その様子を見ていた村長は、暫く考え込み、口を開いた。
「もう一度、テツヤを紅様へ差し出してしまえばいい」
広間がしん、と静まりかえった。
「それは、一度戻されているのに、ですか」
おずおずと一人の村の男が口を開く。
だれも考えても居なかったのだ。
一度紅様に見逃されたテツヤを再び捧げるということなど。
「また、そのまま戻って来たらどうするんです! そしたら次を選ばなければ――」「そのときはその時だ。あのときはどうせ赤ん坊故に見逃されただけの事。だから今回お前から声をかければ問題はなかろう」
――わかったな、黒子。
村人達のギラギラとした目が黒子を見据えている。
黒子は内心ため息を吐き「わかりました」と頷いた。
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