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[mokuji]
村長の家の広間に黒子は転がされていた。
ろうそくの光が濃い影を照らしている。
集まった村の若者達は一様に苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「お前は、大変なことをしてくれたな……!」
「はぁ……。そうですね」
ひくり、と村長に深い皺が刻まれる。
怒りに血走った目で黒子を見据える村長をよそに、当の黒子はなんの感情も浮かべていない顔で答えた。
黒子はもともとこの村の生まれではない。
今から15年ほど昔、酷い飢饉が周辺の村々を襲った年、村外れの道に赤ん坊だった黒子は捨てられていた。
この近隣の村々はこの村と違い、水害や干ばつの影響を非常に受けやすい。
まるでこの村が周りの豊かさを吸い取っているかのように、些細な天候の崩れが顕著に影響するのだ。
それ故に水を、食料を、豊かな資源を得にこの村へとやって来たものも幾人かいた。
しかし彼らもまた、騙され生贄として捧げられ姿を消してしまう。
この村は他の村の富を喰らい、豊穣という餌に釣られ入ったものは村人に食われて二度と出てこられない。
そんな怪談めいた噂が流れ、周辺からは疎まれ畏れられ隔離されるようになった。
――そんな村だからこそ外部に漏れることなくこの因習を行っているのだが。当時の黒子は生まれてまだ日がたっていないようで、近隣の村の者だろうと思われた。
餓えに苦しみ、捨てるより他なかった子供。
ただ何も口にすることなく息絶えるのを待つか、豊かとはいえよそ者は葬られる村で殺されるか。
どちらにせよ確実な死だけが約束されている。
だからこそその親は、ほんのわずかでもわが子が生き延びる可能性がある方に賭けた。
ろうそくの光が濃い影を照らしている。
集まった村の若者達は一様に苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「お前は、大変なことをしてくれたな……!」
「はぁ……。そうですね」
ひくり、と村長に深い皺が刻まれる。
怒りに血走った目で黒子を見据える村長をよそに、当の黒子はなんの感情も浮かべていない顔で答えた。
黒子はもともとこの村の生まれではない。
今から15年ほど昔、酷い飢饉が周辺の村々を襲った年、村外れの道に赤ん坊だった黒子は捨てられていた。
この近隣の村々はこの村と違い、水害や干ばつの影響を非常に受けやすい。
まるでこの村が周りの豊かさを吸い取っているかのように、些細な天候の崩れが顕著に影響するのだ。
それ故に水を、食料を、豊かな資源を得にこの村へとやって来たものも幾人かいた。
しかし彼らもまた、騙され生贄として捧げられ姿を消してしまう。
この村は他の村の富を喰らい、豊穣という餌に釣られ入ったものは村人に食われて二度と出てこられない。
そんな怪談めいた噂が流れ、周辺からは疎まれ畏れられ隔離されるようになった。
――そんな村だからこそ外部に漏れることなくこの因習を行っているのだが。当時の黒子は生まれてまだ日がたっていないようで、近隣の村の者だろうと思われた。
餓えに苦しみ、捨てるより他なかった子供。
ただ何も口にすることなく息絶えるのを待つか、豊かとはいえよそ者は葬られる村で殺されるか。
どちらにせよ確実な死だけが約束されている。
だからこそその親は、ほんのわずかでもわが子が生き延びる可能性がある方に賭けた。
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