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[mokuji]
北風が身に凍みるようになった。
世間では本来日本とはまったく関わりのない筈の行事が騒がれている。
可愛らしくデフォルメされたオバケたちが飾り付けられ、パンプキンのオレンジ色が鮮やかに街を彩る頃、帝光中バスケ部にもその浮かれた空気を持ち込む者がいた。
「――何、してるんですか?」
部室のドアを開いたらそこは異空間だった。
見慣れたロッカーが見え隠れしているから勿論部室そのものである筈なのだが、少なくとも黒子にはそうみえた。
「ジャック・オ・ランタンっス!」
喋るオレンジ色の南瓜――黄瀬が応える。
目と鼻と口だけくり貫かれたカボチャを被っているため顔は見えないが、おそらくその無駄にイケメンな顔に満面の笑みを浮かべているのだろう。
「知らねぇのかよテツ。ハロウィンだよハロウィン」
そう言ったのは青峰だ。
青峰もモコモコな毛皮の狼男の仮装をしている。
「知ってますよ。ケルト系の豊穣祭ですね。――それはともかく、何故部室内がこんなことになっているんですか」
こんなこと――つまり部室内がハロウィンカラーに飾り付けられていることだ。
暗幕のようなものが取り付けられた壁にはカボチャの電飾がぶら下がり、至るところに骸骨やオバケなどの小物が配置されている。
さながらお店のディスプレイのようだ。
さらにどこから調達してきたのか、ランタンのカボチャは本物だった。
――力を注ぐべき場所が違う。
黒子は軽く頭痛を覚えた。
「はあ。あまり散らかすと赤司君に怒られます」
「散らかしてねーよ! それよりテツ」
悪どい――否、満面の笑みを浮かべた青峰がずい、と右手を差し出してきた。
「トリックオアトリート!」
世間では本来日本とはまったく関わりのない筈の行事が騒がれている。
可愛らしくデフォルメされたオバケたちが飾り付けられ、パンプキンのオレンジ色が鮮やかに街を彩る頃、帝光中バスケ部にもその浮かれた空気を持ち込む者がいた。
「――何、してるんですか?」
部室のドアを開いたらそこは異空間だった。
見慣れたロッカーが見え隠れしているから勿論部室そのものである筈なのだが、少なくとも黒子にはそうみえた。
「ジャック・オ・ランタンっス!」
喋るオレンジ色の南瓜――黄瀬が応える。
目と鼻と口だけくり貫かれたカボチャを被っているため顔は見えないが、おそらくその無駄にイケメンな顔に満面の笑みを浮かべているのだろう。
「知らねぇのかよテツ。ハロウィンだよハロウィン」
そう言ったのは青峰だ。
青峰もモコモコな毛皮の狼男の仮装をしている。
「知ってますよ。ケルト系の豊穣祭ですね。――それはともかく、何故部室内がこんなことになっているんですか」
こんなこと――つまり部室内がハロウィンカラーに飾り付けられていることだ。
暗幕のようなものが取り付けられた壁にはカボチャの電飾がぶら下がり、至るところに骸骨やオバケなどの小物が配置されている。
さながらお店のディスプレイのようだ。
さらにどこから調達してきたのか、ランタンのカボチャは本物だった。
――力を注ぐべき場所が違う。
黒子は軽く頭痛を覚えた。
「はあ。あまり散らかすと赤司君に怒られます」
「散らかしてねーよ! それよりテツ」
悪どい――否、満面の笑みを浮かべた青峰がずい、と右手を差し出してきた。
「トリックオアトリート!」
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