3
[ 8/16 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
ドアに目を向けた黄瀬の顔がさっと青ざめた。
「なにをやってるんだ?」
そこに立っていたのは魔王――もとい赤司征十郎だったのだ。
口元は薄く笑みの形になっているのに目は全く笑っていない。
そのオッドアイが二人を冷たく見据えていた。
「ねぇ、なにをやってるの?」
すぅ、と赤司の目が細められた。
――これはどう見ても怒ってるだろう。
鷹の前の雀か、蛇に逢うた蛙か。
二人の背を冷や汗が伝う。
身長は黄瀬や青峰の方が20cm近く高いというのに、まるで見下ろされているかのように思える程の威圧感だ。
「あ、これは、そのっスね……」
「ハロウィンだ、ハロウィン」
空気を読んだ黄瀬はなんとか取り繕おうとしたが、空気を全く読まない青峰が正直に答えてしまった。
赤司の目が更に鋭さを増す。
――終わった。これは終わった。
今日の練習メニューは3倍……いや5倍か、もっとかもしれない。
元からかなりキツいメニューなのに更にハードになるに違いない。
この後身に降りかかるだろう厄災に、黄瀬は心の中で十字を切った。
「へぇ……。面白そうだね。たまにはいいね。そういうアソビも」
「なんか意外っスね。赤司っちはそういうの興味ないかと思ってたっス」
「祭り事は嫌いじゃないよ」
しかし、意外にも赤司の反応は良かった。
それを聞いた青峰は水を得た魚の様に目を輝かせる。
「だろ? だろ!? だから赤司もトリックオアトリート!」
魔王様直々のお許しが出たとばかりに、言うが早いか、にかっと笑い手を突き出した。
怖いもの知らずも居るものだな、と黒子は思う。
赤司が行事は嫌いじゃないと言ったとしても参加するとは一言も言ってないのだ。
それに今赤司がお菓子を持っているとは思えない。
彼にイタズラが出来るのか? ――普通は無理だ。命が惜しい。
そう気がついたのは黄瀬も、だった。
彼の場合は仕掛ける側。青峰の行動に既に泣きそうだ。
ハラハラと見守るしかない二人をよそに、ポケットを探っていた赤司は目当てのものを見つけ、を青峰の手のひらに乗せた。
「これでいいか?」
ちょこん、と乗った可愛らしいそれ。
よく手持ちがありましたね、と黒子がいうと、敦に貰ったんだよ、と赤司が言った。
命拾いをしてほっとする黄瀬とは対照的に、青峰は不服そうに唇を尖らせる。
「残念そうだね」
「あー、折角だから魔王の服着せようと思ってたのによ」
口は災いのもと。赤司の瞳が剣呑な光を帯びた。
「へぇ……大輝は俺のことをそんな風に思っていたんだね」
「え、いや、違っ!」
「今日は特別メニューだな。異論はないだろ?」
有無を言わせない主将の言葉に青峰は項垂れるしか無かった。
「なにをやってるんだ?」
そこに立っていたのは魔王――もとい赤司征十郎だったのだ。
口元は薄く笑みの形になっているのに目は全く笑っていない。
そのオッドアイが二人を冷たく見据えていた。
「ねぇ、なにをやってるの?」
すぅ、と赤司の目が細められた。
――これはどう見ても怒ってるだろう。
鷹の前の雀か、蛇に逢うた蛙か。
二人の背を冷や汗が伝う。
身長は黄瀬や青峰の方が20cm近く高いというのに、まるで見下ろされているかのように思える程の威圧感だ。
「あ、これは、そのっスね……」
「ハロウィンだ、ハロウィン」
空気を読んだ黄瀬はなんとか取り繕おうとしたが、空気を全く読まない青峰が正直に答えてしまった。
赤司の目が更に鋭さを増す。
――終わった。これは終わった。
今日の練習メニューは3倍……いや5倍か、もっとかもしれない。
元からかなりキツいメニューなのに更にハードになるに違いない。
この後身に降りかかるだろう厄災に、黄瀬は心の中で十字を切った。
「へぇ……。面白そうだね。たまにはいいね。そういうアソビも」
「なんか意外っスね。赤司っちはそういうの興味ないかと思ってたっス」
「祭り事は嫌いじゃないよ」
しかし、意外にも赤司の反応は良かった。
それを聞いた青峰は水を得た魚の様に目を輝かせる。
「だろ? だろ!? だから赤司もトリックオアトリート!」
魔王様直々のお許しが出たとばかりに、言うが早いか、にかっと笑い手を突き出した。
怖いもの知らずも居るものだな、と黒子は思う。
赤司が行事は嫌いじゃないと言ったとしても参加するとは一言も言ってないのだ。
それに今赤司がお菓子を持っているとは思えない。
彼にイタズラが出来るのか? ――普通は無理だ。命が惜しい。
そう気がついたのは黄瀬も、だった。
彼の場合は仕掛ける側。青峰の行動に既に泣きそうだ。
ハラハラと見守るしかない二人をよそに、ポケットを探っていた赤司は目当てのものを見つけ、を青峰の手のひらに乗せた。
「これでいいか?」
ちょこん、と乗った可愛らしいそれ。
よく手持ちがありましたね、と黒子がいうと、敦に貰ったんだよ、と赤司が言った。
命拾いをしてほっとする黄瀬とは対照的に、青峰は不服そうに唇を尖らせる。
「残念そうだね」
「あー、折角だから魔王の服着せようと思ってたのによ」
口は災いのもと。赤司の瞳が剣呑な光を帯びた。
「へぇ……大輝は俺のことをそんな風に思っていたんだね」
「え、いや、違っ!」
「今日は特別メニューだな。異論はないだろ?」
有無を言わせない主将の言葉に青峰は項垂れるしか無かった。
[mokuji]