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[mokuji]
「え?」
きょとんと、黒子は目をしばたたかせた。
まさか自分にそんな言葉をふっかけられるとは思ってもいなかったのだ。
「オラ。菓子か、イタズラか。選べ」
「それ……青峰君がやるとなんだかカツアゲにしか見えませんね」「うっせ! ほら、出せよ」
菓子か悪戯か。
この二人のことだ。悪戯なんて、ろくなことをしないということは容易に想像がつく。
しかし黒子には手持ちが何もなかった。
「――何も持ってないです」
「じゃあイタズラっスね!」
眉根を寄せて呟いた黒子に、キラキラと――カボチャで見えないけれど――笑顔を3割増しにした黄瀬は後ろの段ボール箱に駆け寄った。
スタイリストさんから衣装を色々借りたんスよ、とご機嫌に中を漁り一枚の服をひきずり出す。
濃紺の生地のミニ丈ワンピースだった。
ウエストはきゅっと括られ、裾が大きく広がっている。
腰に大きなリボン、袖はパフスリーブになり丸いフォルムが愛らしい。
さらに随所には白いレースがあしらわれている。
いわゆる魔女っ子の服だ。
頭痛は目眩にかわった。
「……それ女性ものですよね。入りません」
いくら彼らに比べ小さいとはいっても一般男性としては平均だ。
当然その肩幅や骨格に女性ものは無理に決まっている。
なにより黒子は女装などするつもりは毛頭ない。
“入らない”で押しきってしまえば彼は諦めるしかないだろうという算段もあった。
しかし――。
「心配しなくてもちゃんと“女装”用だからメンズっス!」
「なら問題ねーな。はやく着替えろよ」
黄瀬はきちんと男物を用意していた。
入らなければ仕方がない、で女装を免れようとした黒子だが、逆に退路を断ってしまったのだ。
「ちゃんと帽子もホウキもあるんスよ!」
「そう……ですか」
ちゃっかり小物まで用意していたあたり計画的反抗に思える。
レギュラーのメンツでこのサイズの衣装が入るのは黒子ともう一人しかいない。
――困った。
逃げ口上のボキャブラリーは黒子にはもうない。
いくらミスディレクションを使える言ってもただの目眩ましにすぎない。
体格のすこぶる良い二人から逃げ果すなど黒子には無理な話だ。
にっちもさっちもいかない。
黒子が、フリフリの衣装を手にしたまま呆然と立ち尽くしていると部室のドアが開いた。
きょとんと、黒子は目をしばたたかせた。
まさか自分にそんな言葉をふっかけられるとは思ってもいなかったのだ。
「オラ。菓子か、イタズラか。選べ」
「それ……青峰君がやるとなんだかカツアゲにしか見えませんね」「うっせ! ほら、出せよ」
菓子か悪戯か。
この二人のことだ。悪戯なんて、ろくなことをしないということは容易に想像がつく。
しかし黒子には手持ちが何もなかった。
「――何も持ってないです」
「じゃあイタズラっスね!」
眉根を寄せて呟いた黒子に、キラキラと――カボチャで見えないけれど――笑顔を3割増しにした黄瀬は後ろの段ボール箱に駆け寄った。
スタイリストさんから衣装を色々借りたんスよ、とご機嫌に中を漁り一枚の服をひきずり出す。
濃紺の生地のミニ丈ワンピースだった。
ウエストはきゅっと括られ、裾が大きく広がっている。
腰に大きなリボン、袖はパフスリーブになり丸いフォルムが愛らしい。
さらに随所には白いレースがあしらわれている。
いわゆる魔女っ子の服だ。
頭痛は目眩にかわった。
「……それ女性ものですよね。入りません」
いくら彼らに比べ小さいとはいっても一般男性としては平均だ。
当然その肩幅や骨格に女性ものは無理に決まっている。
なにより黒子は女装などするつもりは毛頭ない。
“入らない”で押しきってしまえば彼は諦めるしかないだろうという算段もあった。
しかし――。
「心配しなくてもちゃんと“女装”用だからメンズっス!」
「なら問題ねーな。はやく着替えろよ」
黄瀬はきちんと男物を用意していた。
入らなければ仕方がない、で女装を免れようとした黒子だが、逆に退路を断ってしまったのだ。
「ちゃんと帽子もホウキもあるんスよ!」
「そう……ですか」
ちゃっかり小物まで用意していたあたり計画的反抗に思える。
レギュラーのメンツでこのサイズの衣装が入るのは黒子ともう一人しかいない。
――困った。
逃げ口上のボキャブラリーは黒子にはもうない。
いくらミスディレクションを使える言ってもただの目眩ましにすぎない。
体格のすこぶる良い二人から逃げ果すなど黒子には無理な話だ。
にっちもさっちもいかない。
黒子が、フリフリの衣装を手にしたまま呆然と立ち尽くしていると部室のドアが開いた。
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