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ゴールデンレトリバーの黄瀬は新しい飼い主の家に行くことになった。
詳しい人間の事情など黄瀬にはわからないが、以前の飼い主の生活環境が変わるためだ。
今回の飼い主の家は前の飼い主の友人で、他にも大型犬を飼っているため勝手がわかるだろうということで選ばれたようだ。
――別にいいんスけどね……。
既に諦めている黄瀬だが、辺りを見回してスン、と匂いを嗅いだ。
初めて入る家からは他の犬と猫の匂いがしたのだ。
「4……いや、5匹いるっスね」
モデル犬をしている黄瀬にとって、他の犬や人や様々な動物とふれあう機会は多く、他の生き物がいること自体は大した問題ではない。
表面上は仲良くなれる。
しかしそれらと日常的を共にすることはまた別の問題なのだ。
昼間は多くの生き物に囲まれてはいるものの、夜は一人きりのゲージに入る生活をしていた。
いくら嫌な奴だって夜にはサヨナラ。
そんな気楽な生活に今更他者が、それもこんなに多く入り込む生活になろうとは。
まだ見ぬ犬達の存在に流石にげんなりとしてしまうのだ。
――面倒なやつがいないといいんスけど――。
ふう、ととため息を吐き、黄瀬は足を踏み入れた。
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ゴールデンレトリバーの黄瀬は新しい飼い主の家に行くことになった。
詳しい人間の事情など黄瀬にはわからないが、以前の飼い主の生活環境が変わるためだ。
今回の飼い主の家は前の飼い主の友人で、他にも大型犬を飼っているため勝手がわかるだろうということで選ばれたようだ。
――別にいいんスけどね……。
既に諦めている黄瀬だが、辺りを見回してスン、と匂いを嗅いだ。
初めて入る家からは他の犬と猫の匂いがしたのだ。
「4……いや、5匹いるっスね」
モデル犬をしている黄瀬にとって、他の犬や人や様々な動物とふれあう機会は多く、他の生き物がいること自体は大した問題ではない。
表面上は仲良くなれる。
しかしそれらと日常的を共にすることはまた別の問題なのだ。
昼間は多くの生き物に囲まれてはいるものの、夜は一人きりのゲージに入る生活をしていた。
いくら嫌な奴だって夜にはサヨナラ。
そんな気楽な生活に今更他者が、それもこんなに多く入り込む生活になろうとは。
まだ見ぬ犬達の存在に流石にげんなりとしてしまうのだ。
――面倒なやつがいないといいんスけど――。
ふう、ととため息を吐き、黄瀬は足を踏み入れた。
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