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[mokuji]
数日この家で暮らした黄瀬だったが、結局黒子の“特別なところ”は見つからなかった。
いや、特別どころか体力や身体能力のなさ、マイナスポイントばかりが目立っている。
棚に登るだけで体力を使い果たし、猫なのに梁から落下した。
その度に青峰や紫原に助けられ、赤司や緑間にあまり高い所へは登るなと叱られている。
無鉄砲で負けず嫌いらしい彼は「練習したらできるようになります」と言ってはまた今日も回りをハラハラさせている。
それから極端な影の薄さ。
もともと黒色は擬態しやすく、陰に潜んでいてもわかりにくい。
でも黒子はそれだけではなく存在自体が薄いのか、いつの間にか目の前にいた、なんて事がよくあった。
しかも『いつの間にか現れた』のではなく『最初からそこに居た』と言うのだから信じられない。
猫だから気配を消して歩いている、とかそういう類いですらないのだ。
たまに黒子の分のご飯の用意を飼い主に忘れられていたり、なんていうあり得ない影の薄さは些か可哀想ではあったが――。
「わかんないっス……」
うーん、と黄瀬が唸り声をあげ、頭を抱えた。
「何が?」
ボールを銜えた青峰が首を傾げる。
黄瀬と青峰は今、広い庭でわんわんお……1on1という名のボールの取り合い中だ。
青峰お得意の球技は、なかなかその相手を務められる犬がいない。
スピードにしても、単純な力量にしても、ずば抜け過ぎた彼からボールを奪う事はおろか、ボールに触れることすら出来ないのだ。
見た目だけじゃなく身体能力も高スペックな黄瀬は青峰のお眼鏡にかなったようだが、黄瀬も彼に勝てたことは今の所一度もない。
「こんだけ優れた青峰っちがなんで黒子クンを相棒って呼ぶのかっスよ」
「あー……。テツはそういうんじゃねーしな」
アイツは特別だ、とそう話す青峰の顔は緩みきっている。
「“そういう”のじゃないって、なんスか?」
「あー? そのうちわかるだろーよ」
「わけわかんないっス!」
「ハイハイ。よそ見してんなよ!」
「え、ちょ、狡いっス!」
話に飽きた青峰は強制的にゲームを再開した。
黄瀬もそれを慌てて追いかける。
このスピードに付いていくには、他の事なんて考えている暇なんてない。
黄瀬の脳内からは黒子に関することはすぽんと抜け落ちた。
結局この日も黄瀬は一度も青峰に勝てずに終わった。
いや、特別どころか体力や身体能力のなさ、マイナスポイントばかりが目立っている。
棚に登るだけで体力を使い果たし、猫なのに梁から落下した。
その度に青峰や紫原に助けられ、赤司や緑間にあまり高い所へは登るなと叱られている。
無鉄砲で負けず嫌いらしい彼は「練習したらできるようになります」と言ってはまた今日も回りをハラハラさせている。
それから極端な影の薄さ。
もともと黒色は擬態しやすく、陰に潜んでいてもわかりにくい。
でも黒子はそれだけではなく存在自体が薄いのか、いつの間にか目の前にいた、なんて事がよくあった。
しかも『いつの間にか現れた』のではなく『最初からそこに居た』と言うのだから信じられない。
猫だから気配を消して歩いている、とかそういう類いですらないのだ。
たまに黒子の分のご飯の用意を飼い主に忘れられていたり、なんていうあり得ない影の薄さは些か可哀想ではあったが――。
「わかんないっス……」
うーん、と黄瀬が唸り声をあげ、頭を抱えた。
「何が?」
ボールを銜えた青峰が首を傾げる。
黄瀬と青峰は今、広い庭でわんわんお……1on1という名のボールの取り合い中だ。
青峰お得意の球技は、なかなかその相手を務められる犬がいない。
スピードにしても、単純な力量にしても、ずば抜け過ぎた彼からボールを奪う事はおろか、ボールに触れることすら出来ないのだ。
見た目だけじゃなく身体能力も高スペックな黄瀬は青峰のお眼鏡にかなったようだが、黄瀬も彼に勝てたことは今の所一度もない。
「こんだけ優れた青峰っちがなんで黒子クンを相棒って呼ぶのかっスよ」
「あー……。テツはそういうんじゃねーしな」
アイツは特別だ、とそう話す青峰の顔は緩みきっている。
「“そういう”のじゃないって、なんスか?」
「あー? そのうちわかるだろーよ」
「わけわかんないっス!」
「ハイハイ。よそ見してんなよ!」
「え、ちょ、狡いっス!」
話に飽きた青峰は強制的にゲームを再開した。
黄瀬もそれを慌てて追いかける。
このスピードに付いていくには、他の事なんて考えている暇なんてない。
黄瀬の脳内からは黒子に関することはすぽんと抜け落ちた。
結局この日も黄瀬は一度も青峰に勝てずに終わった。
[mokuji]