「うわ」
「わ」
慌てて差し出した手が思いの外かなり強い力で引っ張られ、二人して雪の中に倒れ込む。
軟らかいから怪我はしないけど、ただただ冷たい。
「冷た…!」
「ごっ、ごめん!」
Nは雪から顔をばっと上げて、僕の身体をぱたぱたと払いながら、
「怪我は無かったかい?ごめん、ボクのせいでブラックまで冷たくなっちゃったね」
と心配そうに僕の顔を覗き込んできた。
「あ、…大丈夫。怪我、無いみたいだから。…Nは?」
Nの長い髪の毛に付いた雪を払いながら尋ねると、大丈夫、と頷いた。
お互いに服を払いながら立ち上がる。
「真っ白」
「うん。真っ白。…なんだか、世界が作りかけみたい」
Nは近くの雪を両手で掬って、
「世界はもともとこんな真っ白で、色は後から誰かがつけたのかもね」
と、笑いながら言ってから、そんなはず無いし世界の起源も知ってるけど、と自分で否定して雪を指の隙間から零していった。
「ん?でも、それも面白い仮説だよな」
僕もNのように雪をそっと掬って、それを固める。
Nが不思議そうに見る前で、少しずつ固めて、
「できた。…ほら、ピカチュウ」
雪だるまに耳を付けただけのそれ。
Nはライモンシティであんなに見ていたんだからピカチュウが好きなんじゃないかと思ってのチョイスだった。
Nはそれを見て、すごくよく分からない顔をするから、失敗したかと思った、次の瞬間だった。
「…す、すごいよ!何それ!?ブラック、すごいじゃないか!」
「え?」
「そうか、雪ってそんな風にも出来るんだ!ブラック、すごいよ!」
…あ、なんか分かったかも。
「N。…雪だるま、作ったことある?」
「え?…無いよ?」
完全に理解した。
「よし、じゃあ作ろう。雪だるま」

「でき、た!」
わあ!と歓声を上げるN。
僕だってなんか感動した。
…でかいし。
「こんなの僕も見たこと無いよ。僕ら本当頑張ったな」
高さ、多分150cmは堅い。
上にもう一つ雪玉乗せるのも、シンボラーに手伝ってもらったぐらいだ。
日は傾き始めて、寒さも増して来ている。
「雪だるまって、すごいね!最初あんなに小さかった雪玉がこんなになるんだから」
「そうだなあ」
普通はここまでは頑張らないけど。
Nはその雪だるまの周りをくるりと回って、
「すごいな、本当。あんなに軟らかかったのに、ちゃんと固まってるし」
そう言い、僕の隣にまた立った。
「さ、N。行こうか。日が暮れたら、雪、凍ってもっと滑るから」
「あ、うん」
Nは雪だるまに最後にサヨナラ、と笑った。
僕もじゃあな、と言ってやる。
踵を返し、Nと指を絡める。
「冷たくなってる」
「Nのもだよ。寒いし早く帰ってシャワー浴びよう」
「そうだね」


雪が積もってる
冷たい雪なのに、なんでか暖かい。


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