「N、起きて…」
肩を掴み揺さぶられ、目を開ける。
真っ暗。
「…何時?」
「11時50分は過ぎた、あともう少しで明日」
「どうしたの?」
「あ、うん…今年最後にNと話して、来年最初にNと話したかったから」
「えっ」
そこでブラックに言われて初めて、ボクは日付を思い出す。
「…あ、12月31日、」
「そうだよ、12月31日。今日で今年終わりだよ」
ブラックの指先がボクの髪を梳く。
「…N、今年、ありがとう」
「うん」
「今年も、って言いたいとこだけど、まだ一年目だからね」
「そっ、か」
確かに、まだブラックと出会って、一年目…厳密にはまだ一年も経っちゃいない。
「もうかなり一緒に過ごした気がするけど、まだ一年目か」
「うん。正直僕も変な感じ。…あ、N、ほら見て」
ブラックはライトを点けて時計を指して笑った。
「あと少しだよ」
「本当だ」
ブラックにそっと抱き寄せられる。
「今年もありがとう。…ずっと傍に居たい」
「…勿論だよ。…ボクだって、来年も…その先も、ずっと一緒に居たい」
ぎゅう、と抱きしめ返して。
「…ブラック、ありがとう」
「うん。…あ、N。目、閉じて」
「?…うん」
ブラックの指が頬をすると撫で。
ブラックの唇が唇に重なった。
「…あけましておめでとう。N」
「えっ、今…?」
「うん」
「あけまして、おめでとう」
「おめでとう」
ブラックは嬉しそうに笑った。
「初めて話したの、Nだ」
「うん…ブラックだね」
「今年も、ずっと一緒に居ような」
「うん」
ぎゅうぎゅうと力を込め、ブラックはボクを抱きしめる。
「ずっとずっと」
少し痛いぐらいだけど、嬉しい。
だからボクもぎゅう、と強く抱きしめて、ブラックの胸に顔を埋める。
「…今年も、スキ」
「僕もずっとスキだよ」
一年の始めから、スキだスキだと言い合って。
「こうしてれば、なんだか今年一年まだ一緒に居られる気がするよ」
「そんなことないさ」
「えっ」
ブラックはボクの後ろ髪をくしゃくしゃと撫でて、
「今年も、だよ。ずっと一緒なんだからさ」
と笑った。
「そうだね!」
だから顔を上げ、ボクも笑った。
「今年も、だね」
「そうさ」
「…嬉しいや」
去年までは、年越しなんて気にしてすらなかったから。
そう言ったら、ブラックは少し寂しそうな顔を一瞬してから、また笑って、
「今年からは僕がNと一緒に年越ししてやるよ」
と言ってくれた。
「あ…ありがとう…!」
「あたりまえっ」
年越しだけじゃなくて、全部一緒!
そう言ってまたぐしゃぐしゃ頭を撫で、それからブラックは大きな欠伸をして、
「眠い。…寝ちゃお?」
とボクを抱きしめた。
「うん。…ボクも眠いや」
「だろ?」
「…うん」
ブラックは布団をかけ直し、ボクをぎゅっと抱きしめ、目を閉じた。
「…おやすみ」
「…うん、…おやすみ」
ボクも目を閉じる。
すぐに傍で寝息が聞こえはじめた。


年初めのキミはじめ
毎年、こんな感じで居たいなあ。


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