「メリークリスマス!」 今日も変わらず僕の腕の中で目を覚ましたNに、にっこり笑いながらそういうと、Nは、 「メリークリスマス…?」 と首を傾げた。 「…うん」 予想は、していた。 Nがクリスマスを知らないのなんて、予想してましたよ…! 「うん。クリスマス」 「クリスマス…」 Nはちょっと悩むようにしてから、 「新種のポケモンかい?」 とか言った。 …あー…5文字。確かにね。 「でも、違うよ。…クリスマスっていうのはね…、年に一度、いい子にしてた子供にサンタクロースがプレゼントをくれる日だよ」 「サンタクロース?」 「うん。ひげ生えてるなんか優しそうなじーさん。赤い服着てる」 「へえ…」 「まあ、子供にだからもう僕の所にも来ないけどね。…ていうか、サンタクロースって子供に信じさせてるだけの嘘なんだけど」 身体を起こしながら言うと、Nも身体を起こしながら、首を小さく傾げた。 「そっか…じゃあ、なんでそんなにブラックは嬉しそうなの?」 そう言われて、僕はやっと表情緩みっぱなしなのに気付いた。 でも、仕方ないよな。 きっとサンタクロースなんて来たことが無いであろうNに喜んでもらいたくて、僕はNのためだけにサンタクロースになってあげようなんて。考えていたんだから。 「Nにさ、プレゼントがあるんだ」 「えっ」 「クリスマスプレゼント。恋人同士でもよくやることなんだ。プレゼント。…これ、あげる」 僕は、ベッドの下の引き出しに隠しておいた箱を出して、Nに渡した。 「あ…ありがとう!開けていい?」 「うん。開けてみて。…気に入るといいんだけど」 Nは僕が期待した通りに、凄く嬉しそうな顔でラッピングを解き始めた。 僕はそれを見ながら、ゆっくりNにもたれ掛かった。 Nも軽くこちらにもたれ掛かるようにしてきて、こつん、と頭同士が軽くぶつかった。 Nはラッピングを解き終わって、箱の蓋をゆっくり開けた。 「わあ、…これ、マフラー?」 「うん。Nに似合いそうだなあって。スキ?その色」 「うん!だって、ブラックがボクに似合うと思って選んでくれたんだから!」 Nは笑顔で言いながら箱からそのマフラーを出して広げた。 「暖かそうだね、毛糸だしね」 色は薄いベージュ。なんだか柔らかいふわふわした感じのする色で、Nの雰囲気に似合う気がして、この色にした。 「あっ、これ…少し長めなのかな」 「うん。…ほら、こうやってさ」 マフラーをくるりと回して、僕ごとNを巻く。 「暖かいだろ?」 二人で一本のマフラー。 そのままぎゅっとNを抱きしめたら、Nはうん、と頷いて、 「いつもより、暖かい」 と嬉しそうに言ってくれた。 「なっ?こうしてたらいいんじゃないかなあってさ。だからマフラーにしたんだ。環境に優しいだろ?暖房代も節約になるし」 「確かにね」 Nはふふ、と笑って、 「でも、実際はブラックがこうしたかったんじゃないのかな?」 と悪戯っぽく言った。 「まあね」 だから僕もにっと笑って見せて、 「お互いにシアワセだろ?」 とマフラーを少し巻きなおしてまたNを抱きしめた。 「うん。シアワセだね」 「これが、僕からのプレゼント。…マフラーだけじゃないんだよ」 「うん。…貰ったよ」 Nは僕を抱きしめ返しながら、すっと顔を近付けてきた。 「…お返し…これしかないんだけど…いいかな?」 クリスマス、知らなかったから。 「いいよ。…じゃあ。貰うな」 Nの頬の横に手をかけて、そっと唇をNの唇に重ねる。 一瞬、触れるだけのキス。 それからまた抱きしめ直して、ぎゅうと身体をくっつける。 「暖かい」 「うん。…しばらくこうしてていい?」 「うん。プレゼントだからね」 Nは楽しそうに笑って、僕の頬にNの頬をくっつけて、 「暖房、確かにいらないね。暖かい」 とシアワセそうに言ってくれた。 「クリスマス、スキ?」 「うーん…」 Nは頷いてくれるかと思ったら少し考えるようにしてから、 「ボク、ブラックの方がスキだよ」 とこう言った。 「…なんか違う…ま、いっか」 シアワセなプレゼント マフラーかけて自分がプレゼント!なんてね。 back |