「ここが、自然公園だ」
「うわあ、広い……!」
「曜日によったら虫取り大会とかもしてんだぜ」
「へえ……」
ゴールドは大きく伸びをして、
「こっからはまあなかなかコガネも近いから、コガネの奴らが気晴らしに来たりもしててそれなりに賑わう公園なんだ」
と言った。
相変わらずバクフーンはゴールドの後をついて歩いている。
なんだか珍しい光景だからジョウトではポケモンを出して歩くのが流行りなのかと思ったりもしたけれど、周りを見るかぎりそうでも無いらしい。
連れ歩いているのはゴールド含め数人しか居ない。
「……あのさ」
「ん、何だ?ブラック」
「バクフーン、なんで出してるのかと思って」
「あ、あー。こいつな」
ゴールドはバクフーンの頭をぐしゃぐしゃと撫でて、
「なんかこいつをくれた博士が連れ歩きについて研究してたから、付き合い。まあ楽しいし、な」
と答えてくれた。
「最近はあんまりふらふらできてねえからさ、まあ歩く時ぐらいはなと思って。……あ、そうだ。せっかくだからさ、三人とこいつで写真撮ろうぜ」
ゴールドは噴水の近くにいたおじさんに話し掛け、また戻ってきた。
「ほら、並んで並んで。ちゃんと笑えよ!」
噴水の前に僕とNを立たせ、Nの隣にゴールドは立ち、そのさらに隣にバクフーンが立った。
「はい、チーズ!」
フラッシュが光り、ゴールドはおじさんの方に走っていって、少し喋って戻ってきた。
「パソコンに送ってくれるんだぜ。無料で撮ってくれるしいい人なんだよなあ」
「へえ、凄い、写真が好きなのかな」
「かもしれねえな、分かんねえけど!」
ゴールドはNに笑って、それから、
「後で写真送るかコピーしてやるよ」
と言った。
「ありがと」
「ん、良いんだよ」
ゴールドは今度は僕らを見て、ぱっと思い付いたように手を打って、
「そうだ、昼飯、俺の恋人呼んでいいか?紹介したいし」
「いいよ、な?」
「うん」
「じゃあ電話してくるから、この辺うろうろしてくれるか?」
「分かった」
「じゃ、一旦解散な」
ゴールドはポケギアを持って操作し始めた。
僕はとりあえずNの手を引いて、近くをうろうろすることにした。
Nは僕が視線を送ると、にっこり笑ってくれた。
「あっち行ってみよう」
「うん」
Nは僕の手をぎゅっと握り返してくれる。
Nの手は微かに冷たい。
僕の手の温度を少しでも分けようと握り直して、歩きだす。
「綺麗な所だよな。手入れも行き届いてる」
「そうだね、ここにいる人やポケモンは皆穏やかだし、良い所だよね」
「そうだよな」
道も綺麗だし、草むらも整っている。
「なんだか、いいなあ。こんな所来れるなんて、シアワセだよ。ブラックのお陰だね。ありがとう」
「うん」
Nのふわふわした髪の毛が風に吹かれて揺れた。
風が吹いた方をふっと振り向いたら、ゴールドの隣に誰かが居て、モンスターボールに何かをしまうところだった。
きっと空を飛んで来たんだろう。
赤い髪の毛に黒系の服。
「きっとあの人がゴールドの恋人なんだろうね」
「だろうな。男って言ってたし」
「いい人なのかな」
「ゴールドの恋人だし、悪くはないんじゃないのか」
「だといいな」
Nは僕を見て、それから、
「ブラックの方がいいけどね」
とにっこり。
正直なんだか嬉しくて、僕はNの手を引き寄せて、さっきまでより近付いて歩きだした。
「ブラック」
「……何?」
「暖かいね、ブラックの手」
「そうかな」
僕は小さくNに呟き、それからまたゴールドの方を見た。
すると、ゴールドはこちらに気付いたらしく、こちらに手招きをした。
「行こう」
「うん」
Nの手を引いて、ゴールドの方に歩く。
目の前まで戻ると、ゴールドはにっと笑って、
「こいつが、俺のシルバー」
「……俺の、じゃない」
「俺の、なの!……で、こいつらがさっき言ったブラックとNな」
「よろしく」
「よろしくお願いします」
「……ああ」
シルバー、と呼ばれたその人は、小さく返事をしてくれた。
「シルバー、ほら元気よく!……ブラック、N、ごめんな。無愛想で」
「いや、大丈夫だ」
「うん、大丈夫」
「ほらシルバー、やっさしー後輩だろ」
「……」
シルバーは少し経ってから、
「……そうだな」
と頷いた。
「……よしっ、じゃあ昼飯なんか俺が先輩として奢ってやる!行こうぜ!」
ゴールドは僕らを促し、シルバーの手を掴んで、楽しそうに歩いていった。


先輩は自由人?
色々なタイプの人と話すのもいい経験になるんじゃないかな。


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