「ブラック、シャワー浴びたよ」 「うん……きつくない?」 「大丈夫そう」 Nは僕の服を着てくれた。 ……流石に下着は貸してない。Nだって流石に下着ぐらいはまだ持ってた。 「ブラック?」 「あ、うん。隣おいで」 「うん」 「母さん、今晩御飯の買い出し行ってるから、もう少ししたら帰ってくるよ」 「うん」 Nは、僕の服を着てるから、なんとなく落ち着かないらしくて、ベッドに腰掛けてから、袖を少し引っ張ってみたりしていたけど、急に、 「あっ」 と声を上げるから、どうしたのかと思えば、 「ブラックの匂い、する……」 とか言い出すから、僕は思わずNに、 「そんなこと、言うなよっ」 と言ったら、 「いい匂いするよ?」 と笑顔で返された。 「……うん、そっか……」 僕はもう反論する気も起きなくて、Nの膝に頭を乗せるように上半身を倒した。 「ブラック?」 「なんか、疲れちゃった……」 「あ、うん……いろいろありがとう。ブラックのお陰で風邪ひかなそう」 Nはきっと理由を正しく理解はしてないだろうけど、僕はNが逃げないから、Nの膝に頭を乗せたままで、目を閉じた。 そしたらNはやっぱり頭を撫でてくれた。 きっとNは今まで、ポケモン達とこうやって接してたんだろう。 人との付き合いで傷付いたポケモン達を、沢山癒してあげてたんだろう。 Nの手は優しくて、本当に落ち着く。 撫でてくれるのはNの手なんだけど、目を開けて視界の端にかするのは僕がいつも着てる服なんだから何だか変な感じだ。 「ブラックがいい夢、見られますように」 「うん……」 Nの手が僕の頬を撫でる。 だんだんぼんやりと意識がかすんできた。 そういえば、こんな時間に寝たら夜眠れないなあ、と思ったけど、そんなのもうどうでもよくなって、結局意識を手放した。 いい匂いするよ? 僕は甘えるのが好きなだけ。 back |