ブラック、と呼ばれて振り返ったら、Nが髪の毛から水をぽたぽた落としながら、……いや、全身水浸しでそこに立っていた。 「え、N!?寒いだろ!?」 「うん……寒い」 Nの腕に触れると冷たくて震えていた。 「どうしたんだ?いや、待って、タオル取ってくるから」 「うん……ありがとう」 「大丈夫」 僕は一旦自分の部屋に行ってバスタオルを2枚持ってNの所に戻った。 「ほら、これ……」 と1枚を渡して、もう1枚で僕もNを拭いて、タオルでNを包むようにした。 「う、ん……」 Nは長い髪の毛をくしゃくしゃと拭き、それから僕の額にこつん、と額をくっつけてきた。 「どうした?」 「ブラック、暖かい」 「Nが冷たいんだよ。……どうしてこんなに濡れて来たんだ?」 「えっと……あの、……雨が急に降って来て、見たことないポケモンが居たから、話しかけようと思って外に出たら……気付いたら居なくて……」 「……そっか」 Nのことを大体拭いて、頬を少し軽くつねって、 「次からは、せめて傘、差そうか」 と言ったら、Nは少し決まり悪そうに笑って、 「あ、うん……そっか」 と言った。 「そっか、って……」 「見たこと無いポケモンだったから……思わず飛び出しちゃって」 「ほら、お湯点けてあげるから、シャワー浴びておいで。着替えも出すから」 「あっ……でも今全部洗濯してて」 「僕のちょっと大きめだから大丈夫だって、ほら早くしないと風邪ひくよ」 「う、うん」 Nを浴室に押し込むように連れていってから、僕はひそかに決めた。 ……あのポケモン、捕まえてNに見せてあげよう。 ポケモン図鑑から心当たりのポケモンを読み出して、それからそのまま電源を切って、また僕は今度は着替えを取りに自分の部屋に戻った。 思わずとは言うけれど お願い、もう少し考えて! back |