カノコタウンに戻って、何日かが過ぎた。
朝起きると、やっぱり腕の中にNがいて。
今日もがっちりNに抱きしめられていて、起きるまではベッドから降りられそうにない。
「N」
「ん……」
「起きて」
「う、ぅ……」
Nは、僕のことをさらにぎゅう、と抱きしめてくる。
「うわ、N、起きて」
「んん……」
Nは幸せそうな顔で、僕に擦り寄ってくる。
これで寝てるんだからどうしようもない。
「Nー、起きてって」
「……ふあ、あ……ブラック……」
「おはよう。N」
「あ……あ!ごっ、ごめん!またボク……!」
「いいのいいの。気にしない気にしない。まあ嬉しくなくはないし、ね」
「う、うん」
Nは僕を抱きしめたままだった腕を離して、ベッドに腰掛けた。
僕もその隣に座って、Nの肩に頭をもたせ掛けた。
「ブラック?」
「ん、……嫌だった?」
「嫌じゃないけど、下降りなくていいの?」
「あ、今日は母さん早くから出掛けてるんだ。だから、大丈夫」
Nを横から抱きしめて、寄り掛かる。
「そうなんだ」
「んー……久々にNと二人っきり」
「そうだね。ブラックと二人だ」
Nは僕が寄り掛かったのと逆の手で、頭を撫でてくれた。
少しNの手はひんやりして気持ちいい。
ちょっとくすぐったくてはは、と笑ってみたら、Nも楽しそうで安心した。
「ブラックの髪、ちょっとかためだね」
「あー、うん。だから癖付くとなかなか取れなくてさー。Nの髪、柔らかくてすきかな」
「そうかな?ありがとう」
「いいえー」
Nに寄り掛かったままだと、流石にNも辛いかと思って、僕はNから離れた。
すると、Nは僕をぎゅっと抱きしめた。
「うわっ」
また僕はNに寄り掛かる体制になってしまう。
Nは、よく僕が離れるとすぐ自分からくっついてくる。
「N、……重くない?」
「大丈夫」
少し考えて、一つの考えにたどり着いた。
「N、……寂しい?」
「えっ」
「いつも、すぐ僕から離れたらくっついてくるからさ。……寂しかった?」
「うん……なんだかね、くっついてたら……大丈夫な気がして。……不安なんだ。ブラックが、いつかいなくなったらって、それが不安で不安で仕方なくなるんだ。……くっついてれば、ブラックが離れていきそうになっても、すぐ引き止められそうだから……だから、ボクはこうやってすぐくっつきたくなるのかもしれない」
「そっか」
Nの手を握って、Nの肩にまた頭をもたせ掛けた。
「じゃあ……こうしてることでNが安心できるなら、ずっとこうしててあげるから、だからさ」
一旦言葉を切って、
「いつになってもいいから、くっついてなくても居なくならないって、少しだけでも僕を信じて」
と言ったら、Nは頷いてくれた。
「ブラックのことなら……信じられるって、思うよ」
「僕も、Nのこと、信じるから」
そう言ってから、目を閉じたら、Nはまた頭を撫でてくれた。


信じて待ってるよ
いつか完全な信頼を寄せてくれたらな。


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