死神&紳士と壱鬼
2013.06.20.Thursday
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カツカツと靴音を鳴らして学園の廊下歩くのは、改造が施されたハットとステッキが特徴的な紳士服姿の男―ジェントルだった。
彼は学園祭で賑わう喧騒を離れ、模擬店は出さずに物置化としている教室の前の廊下を歩いていた。
「やれやれ…大人数で集い馬鹿騒ぎ、実に優雅さにもスマートさにも欠いているっ!」
どうやら学園祭のアットホームで賑やかなノリが気にくわないらしい。
半ば苛立った様に一人、無人の廊下で愚痴ていた。
しかし苛立つ彼の頭にふと過るのは、一人の少女の姿。
ぶつかった際に仮面が外れた時、それを拾い上げてくれた少女。
その少女の瞳を見た時、ずっと封じてきた遠い記憶が不意に蘇った。
―嗚呼、あの人と同じ眼をしている。
懐かしさと愛しさが一瞬胸に込み上げたが、またすぐにその記憶と想いを封じた。
そしてさっさと仮面を奪い返すと、足早にその少女の前から立ち去ったのであった。
「……何故今更になって、思い出すのだろうかね。…あの人はもう―」
脳裏にその人物を描きながら呟く最中、不意に鎖の音が舞い込んできた。
はっと我に返ってその音の方を見遣れば、廊下の曲がり角からデスがのそりと姿を見せた。
ジェントルは気を取り直すと、デスの方へとつかつかと近付きながら話す。
「やあやあデス君!裏切り者達は見つかったかね?」
「………」
ジェントルの言葉に、ふるふると頭を横に動かすデス。
その反応に、ジェントルは盛大な溜め息をついた。
「はぁ…スパイダー君に加え我々も探し回っているというのに、何だこの成果の無さは!私の求めるスマートさからかけ離れているではないかっ!」
「………」
「それに何だ、君のその仮面は!以前に撤退した時から変わっていないではないか!全く、あれほど『それは直しておきたまえ』と言ったというのに…」
「………」
次々と不満をぶちまけるジェントルを、デスは黙ってじっと見守る。
しかし愚痴る方は、ふと思い付いた様に言葉を続けた。
「…そうだデス君。君は以前、亡者のレディを仕留めそこねただろう?ならば今日こそはスマートに葬って進ぜるべきではないかね?」
「…」
その言葉に、デスの肩がぴくりと微かに動いた。
しかしジェントルは気付かない様子で、まだ言葉を紡ぐ。
「君の持っていた魂を奪ったとはいえ、あの傷はそう簡単には癒えまい。恐らくあのレディは…保健室に身を寄せていると考えられる」
「………」
「…今度は確実に仕留めろ。いいな」
ジェントルは先程の口調とは変わり低くそう囁くが、デスはその言葉にもやはり返事をしなかった。
そうして二人は各々別れて行動しようとした時だった。
ばたばたと荒々しい音を立てながら、誰かが二人の元まで走ってくる足音が聞こえた。
程なくして、曲がり角から現れたのは―
「また一段と煩そうなのが…」
「………」
「…あ?何だお前ら?」
二人の視線の先にいたのは、赤く逆立つ髪と二本の角が特徴的な妖人、壱鬼だった。
軽く息が上がっている彼は、どうやら回廊のメンバーのスパイダーを探し回っていたらしい。
しかしそれを知らぬジェントルは、走ってきた先ほどの足音といい、汗を滲ませ肩で息する様子の壱鬼が、大層気にくわなかった様である。
元回廊のメンバーの始末を余所に、思わず彼を罵っていた。
「何だね君は!その格好といい髪型といい、実にスマートではないっ!!」
「はぁ!?何だよテメーはいきなり!」
「更にその顔っ!ふてぶてしい目付き、優雅さにもスマートさにも欠いて品性の欠片もないっ!!」
「おまっ、顔は関係ねぇだろうがァァ!!」
言いたい放題のジェントルに、さすがに壱鬼も反発する。
と同時に、怒りも買ったようだった。
「よーし分かった!目的から逸れるが、まずはお前らからブッ飛ばしてやらぁ!!」
「ほう!我々に戦いを挑むとは…その心意気だけは誉めて進ぜよう」
「………」
憤って息巻く壱鬼に対し、ジェントルとデスも応戦の構えを示す。
次第に空気が張りつめてくる中、ジェントルは思い出した様に言葉を紡いだ。
「そういえば名乗りがまだだったね。私は回廊構成員ジェントル、そしてこちらが同じく構成員のデス君だ」
「かいろーだかういろーだかよく知らんが、テメェらをブッ飛ばすこの俺は壱鬼だ!よーく覚えとけっ!!」
「やれやれ…品性もない上におつむまで弱いとは…スマートとは正反対の青年だね、君は」
「あぁ゙!?何か言いやがったかこの髭野郎!」
「いいや、何も?とにかくその汚い言葉を吐き出す口を、一撃で封じて差し上げよう」
かちゃり、と音を立ててステッキ状の銃を構えるジェントル。
その隣で、無言で紫の大鎌を構えるデス。
二人と対峙する壱鬼も妖術の焔を灯し、口元には不敵な笑みを浮かべた。
*Next…?*
* * * * * * *
ということで、桜花様から繋げてジェントルとデスを動かしてみました
ちなみにデスは仮面を修理していなかった模様(笑)
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